「料理には自信がある。でも、なぜか売上が頭打ちのまま」
「値引きクーポンで集客しているけど、月末になるとお金が残っていない」
「周りの同業者が閉店していくのを見て、他人事とは思えなくなってきた」
こういう話、本当によく聞きます。毎日一生懸命に現場に立っているのに、気づけば売上が横ばいで、利益も増えない。でも「何を変えればいいか」がわからないから、とりあえず今日も厨房に入って仕込みをして、閉店後に疲れ果てて帰る。
この記事では、そんな状況にいる経営者の方に向けて、「売上を3つの系統で考える」というシンプルな発想をお伝えします。一時的な売上アップではなく、10年・20年と続く経営基盤を作るための考え方です。
📋 この記事でわかること
- なぜ「いい料理を作れば売れる」だけでは長期繁盛できないのか
- 売上を「店内・複数収益源・接触頻度」の3系統に分解する考え方
- 値引きなしで客単価・客数を伸ばした店舗の実際の事例
- 時代が変わっても揺るがない経営基盤を作る具体的なステップ
こんな方におすすめ
- ✅ 売上が横ばいで、何から手をつければいいかわからない方
- ✅ 値引きクーポンに頼らず利益を増やしたいと考えている方
- ✅ 10年・20年先も続くお店を作りたいと本気で考えている方
- ✅ 店内売上以外の収益源を作りたいが、何から始めればいいかわからない方
- ✅ 自分のお店の「売上の弱点」がどこにあるのか整理したい方

目次
「繁盛している」と「長期繁盛できる」は別の話
先日、ある飲食店の経営者の方からこんな話を聞かせてもらいました。
「オープン当初は行列ができるくらい賑わっていた。でも3年が過ぎたあたりから、ふと気づいたら客数が落ちていた。料理は変えていない。スタッフの接客も悪くない。でも数字は確実に下がっている」と。
これ、決して珍しいことではないんです。むしろ多くのお店が通る道です。
問題は「なぜ落ちたか」の原因にあります。多くの場合、原因はひとつじゃない。「新規客が来なくなった」「リピーターが減った」「客単価が落ちた」という複数の変化が、少しずつ同時進行しているんです。
そして怖いのは、この変化に気づいたときにはすでにかなり進行していること。毎日現場に立っている経営者ほど、数字の変化に気づくのが遅れる傾向があります。
「お客さんは業種業態で選んでいるんじゃないんです。『この店に来ると自分はどう良くなるのか』という理由で来ている。だから、その理由を言葉にして伝え続けられる店だけが、長期的に選ばれ続けます」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店グループ総代表)
江戸時代の日本の人口は4,000万人、今は1億3,000万人いますが、これからは再び減少局面に入ります。人口が減るということは、お客さんの絶対数が減るということ。この大きな流れの中で「今と同じやり方で頑張り続ける」だけでは、どこかで限界が来ます。
では何が必要か。答えは「事業の形を変え続けられる柔軟性」です。
売上を「3つの系統」で考える
私がコンサルティングの現場でよく使うのが、売上を3つの系統に分けて考える方法です。
チェックポイント1:系統①「店内売上を最大化できているか」
まず基本となるのが、今お店に来てくれているお客さんからいただく売上です。新規客を増やす前に、今来てくれているお客さんに最大限の価値を届けられているか。これが土台です。
具体的には、「入店率」「注文点数」「客単価」「再来店率」の4つを見直します。たとえばメニューブックの並び順。安いメニューから順番に並んでいませんか? 実は、一番最初に目に入るメニューが一番売れやすい。一番売りたいメニューを上に持ってくるだけで、客単価が変わります。
✅ ポイント:まずは今のお客さんからいただく売上を「見直す」ことから始める。新規集客より先に、入店率・注文点数・客単価の改善を。
チェックポイント2:系統②「店内以外の収益源があるか」
千葉県のお好み焼き店の話をします。このお店は製薬会社向けの弁当(単価2,500〜3,000円)を朝50個受注する仕組みを作りました。店内の売上とは別に、毎朝安定して12万5,000円〜15万円の収益が入ってくる「第2のお財布」ができたわけです。
私はよく「お賽銭箱を複数持ちなさい」という話をします。収益源が1つだけだと、それが崩れた瞬間にキャッシュが詰まります。でも複数あれば、1つが減っても他でカバーできる。デリバリー・物販・法人向けの食事提供・サブスク……同じお店でも、アイデア次第で収益の入口はいくつでも作れます。
✅ ポイント:「飲食店だから店内売上だけ」という思い込みを外す。既存のリソース(場所・スタッフ・メニュー)を活かした第2・第3の収益経路を設計する。
チェックポイント3:系統③「接触頻度の仕組みがあるか」
売上が安定している店に共通しているのが、お客さんとの接点が「来店時だけ」になっていないことです。LINE・SNS・メール配信……どんなツールでもいいんですが、来店していない日にも自店の存在を思い出してもらえる仕組みがあるかどうか。
心理学の言葉で「ザイアンス効果」といいますが、人は何度も接触したものに親近感を覚えます。月に一度来てくれるお客さんに、月に2〜3回LINEで「今月の新メニュー」「季節のおすすめ」を届けるだけで、再来店率が変わります。
✅ ポイント:接触頻度の仕組みは「難しい技術」は不要。LINEの友達登録を促して、月に2〜3回メッセージを送るだけで始められる。
✓ ここまでのポイント
- 売上は「店内売上・複数収益源・接触頻度」の3系統で設計する
- 新規集客より先に、今来ているお客さんへの価値提供を最大化することが先決
- 収益源が1本だけの経営は、環境変化に脆い。「お賽銭箱を複数」の発想が長期繁盛の土台
「値引きなし」で売上が伸びた店が全国にいる
ここで正直に言います。「値引きなしで売上を伸ばす」というと、最初は半信半疑の方が多いんです。「うちは競合が多いから値引きしないと集客できない」「値段を下げないと誰も来てくれない」という声をよく聞きます。
でも、実際に数字を見てください。
「値引きせずに、客単価と客数を同時に伸ばすことができました。以前は『料理の質を上げれば客が来る』と信じていたんですが、伝え方を変えるだけでこんなに変わるとは思っていなかったです」
増益繁盛クラブ会員・飲食店経営者
和歌山県の飲食店では、ランチにハンバーグ・ハラミステーキ・エビフライの「メイン3つ同時盛り」プレート(2,300〜2,500円)を開発しました。地域にないコンセプトで、客単価と集客数を同時に伸ばした事例です。月商は130万円から450万円へ、約3.5倍になっています。
奈良県のうどん店では、既存メニューの「麺の幅を広くした」だけでSNSでバズが起きました。新しい設備投資も、特別なコストも不要。既存の要素を少し組み合わせ直しただけです。
共通しているのは何か。どのお店も「値引きで集客する」という選択をしていないことです。代わりに、「お客さんにとってどう良いのか」を伝える言葉と仕組みを整えた。それだけで、売上の構造が変わっています。
「メニュー名を『カット』と書いていても、お客さんには何が良くなるかが伝わらない。『朝のセットが楽になる扱いやすさデザイン』という言葉に変えた瞬間に、選ばれる理由ができる。これを私は『ご利益の言葉』と呼んでいます。飲食店のメニューも同じです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店グループ総代表)
長期繁盛の本質は「業種」ではなく「事業の定義」にある
少し視野を広げた話をします。
人力車という乗り物があります。明治時代には大変な繁盛業種でした。でも自動車が普及すると、人力車業は消えていった。ここで考えてほしいのは、「人力車業」として定義していた経営者と、「移動のお手伝い業」として定義していた経営者の違いです。後者なら、時代に合わせてタクシー業になることも、観光案内業になることも選べた。
これは飲食店でも同じことが言えます。「ラーメン店」として定義するか、「疲れた体に元気を届ける業」として定義するか。後者であれば、テイクアウト・EC・レシピ本・地域の学校への食育講座など、時代や環境に応じて形を変えながら事業を続けられます。
アメリカンエキスプレスは、もともと運送業でした。それが保険業になり、トラベラーズチェックになり、今はクレジットカード事業を主力にしている。一見全然違う事業に見えますが、根っこにあるのは「お客さんが困っていることを解決する」という一貫した定義です。
「うちは飲食店だから」「うちは美容室だから」という業種の枠に自分を縛る必要はない。大切なのは、「うちはお客さんのどんな問題を解決するお店なのか」という定義を持つことです。
まず今週からできる、3系統の点検から始めよう
大きな話をしてきましたが、始めることはシンプルです。
改善 STEP 1
今の売上の「入口」を3系統で棚下ろしする
店内売上・店外収益・接触頻度の3つで、自分のお店の現状を書き出してみてください。「系統②と③がない」と気づくだけで、次に何をすべきかが見えてきます。
⚠️ よくある失敗:「新しいことを始めよう」と意気込んで、今の売上の改善が後回しになる。まず今来ているお客さんへの価値提供(系統①)の改善が最優先です。
改善 STEP 2
「ご利益の言葉」でメニューを1つ書き換える
今週中に、メニューの中で一番売りたい1品だけ、名前と説明文を「お客さんにとってどう良くなるか」という言葉に書き換えてみてください。「肉汁が溢れ出す」「翌朝の目覚めが軽くなる」など、お客さんが注文した後の状態を描く言葉です。
⚠️ よくある失敗:「うちのこだわり」を書いてしまう。お客さんが知りたいのは「自分がどう良くなるか」であって、「お店がどれだけ頑張ったか」ではありません。
改善 STEP 3
接触頻度の仕組みを1つ作る
LINE公式アカウントを作って、レジ横にQRコードを置く。これだけで接触頻度の仕組みの第一歩になります。月に2〜3回、新メニューや季節の情報を送るだけでいい。鳥取県のラーメン店は、GoogleビジネスプロフィールとSNSの口コミをAIで分析して「お客さんが評価しているポイント」を言語化し、それをキャッチコピーに反映させることで訴求力を大幅に強化しました。難しいことは何もありません。
⚠️ よくある失敗:「完璧な内容を準備してから発信しよう」と思って、結局何も発信しない。最初の1通は短くていい。まず送り始めることが大切です。
私がお伝えしたいのは、「今日から3つ全部やれ」ということではありません。この3系統の視点で自分のお店を見たとき、どこに一番伸びしろがあるかを自分で診断できるようになること。それが長期繁盛の入口です。
20年以上、北海道から沖縄、アメリカ在住の日本人経営者まで、飲食店・美容室・小売店の経営者と一緒に取り組んできた中でわかったのは、売上を伸ばすのに特別な才能は要らないということ。必要なのは、「どの系統が弱いか」を見抜く視点と、小さな改善を積み重ねる実行力です。
「10年・20年と続くお店を作りたい」という気持ちがあるなら、今日この記事を読んでいるあなたは、すでに経営者として次のステージに立っています。
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どちらもお気軽にご覧ください。一緒に、揺るがない経営基盤を作っていきましょう。