先日、50代の和食店のご主人からこんな相談をいただきました。
「ジョイマンさん、セミナーに行くたびに『採用が大事』『人材育成が大事』と言われるんですが、そもそも人が来ないんです。求人を出しても応募がゼロ。もう半年以上ワンオペに近い状態で、体がもちません」
このご主人の言葉を聞いて、私はすぐに思いました。「ああ、セミナーで学ぶ前に整えるべき視点が、まだそこにある」と。
セミナーで採用のテクニックを学んでも、採用できない本質的な理由が変わっていなければ、何も変わりません。今日はそのことを、このご主人のケースを中心にお話しさせてください。
📋 この記事でわかること
- 採用できない本当の原因が「求人の出し方」ではない理由
- 理念型求人とは何か、条件型求人との決定的な違い
- 働きたいと思われる店をつくるために整えるべき3つの視点
- 仕組み化が採用力と経営の両方を同時に変えた実例
こんな方におすすめ
- ✅ 求人を出しても応募が集まらないと悩んでいる方
- ✅ ワンオペや少人数体制が限界に近づいている方
- ✅ 採用したスタッフがすぐ辞めてしまう経験をお持ちの方
- ✅ セミナーや採用ツールを試しても手ごたえを感じられない方
- ✅ 店が自分個人の腕に依存しすぎていると感じている方

目次
「給与と休日」しか書いていない求人票が、人を遠ざけている
多くの飲食店の求人票を見ると、こう書いてあります。
「時給1,050円・週2日〜OK・まかない付き・未経験歓迎」
もちろん、条件は大切です。でも正直に言うと、この書き方では求職者の目に「どこにでもある求人」としか映りません。同じ条件・同じ表現の求人が、同じ求人サイトに何十件も並んでいるからです。
条件で比較される土俵に立てば、結果は「条件の良い順」に埋もれるだけ。求職者は給与の高い順、休日の多い順でスクロールしていくので、中規模の個人店が大手チェーンに勝てる理由がありません。
❌ 条件型求人(よくあるパターン)
- 給与・シフト・待遇の羅列のみで構成されている
- 「なぜこの店で働くのか」が一切伝わらない
- 大手チェーンや好条件の競合に埋もれてしまう
- 仮に採用できても「条件目当て」のため定着しにくい
✅ 理念型求人(推奨アプローチ)
- 「どんなお客さんを、どんな価値で幸せにするお店か」が明文化されている
- 「ここで働くとどんな人間に成長できるか」がストーリーで伝わる
- 理念に共感した人材が集まるため、入社後の定着率が高い
- 条件では比較されない、唯一無二の求人になる
採用難の本質は「求人の出し方」ではなく「店の在り方」の問題
冒頭の和食店のご主人とやり取りを続ける中で、ひとつのことが見えてきました。彼の店には「うちはこういう店です」という言葉が、どこにもなかったのです。
ホームページもなく、SNSも更新されておらず、看板には屋号と営業時間だけ。求職者がその店を事前に調べようとしても、何も出てこない状態でした。
考えてみてください。今の求職者は、応募する前に必ずお店を調べます。Googleで検索し、Instagramを見て、口コミを確認する。その結果、「この店では自分はどんな経験ができるか」が見えなければ、応募には至りません。
つまり、採用難とは「求人の出し方の問題」ではなく、「求職者から見て働きたいと思える店になっているか」という、経営全体の問題なのです。
「お客さん集めと、スタッフ集めは、原理がまったく同じです。どちらも『この人のところに行けば、自分はどう良くなるか』が伝わらなければ、動いてもらえない。求人票を変える前に、まず店が発信している物語を整えてください」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所 代表取締役)
✓ ここまでのポイント
- 条件だけ並べた求人票は、大手との比較で埋もれる一方になる
- 求職者は応募前に店を調べる。「何も出てこない店」には応募されない
- 採用難の本質は「求人の書き方」ではなく「働きたいと思われる店かどうか」
セミナーより先に整えるべき、3つの視点
採用に悩む経営者ほど、「採用セミナーに行けば解決する」と考えがちです。でも、テクニックを学んでも土台がなければ機能しません。セミナーに行く前に、まずこの3つを整えてください。
チェックポイント1:自店の「物語」は言語化されているか
「どんなお客さんを、どんな価値で、どう幸せにしているお店なのか」を、一文で説明できますか。「美味しい料理を提供しています」は物語ではありません。「地元の漁師から直送される鮮魚を、化学調味料なしで仕立て、子どもから高齢者まで安心して食べられる和食を出している店」――こういう具体性が、求職者の心を動かします。
✅ ポイント:まずは紙に「うちの店が一番大切にしていること」を5つ書き出してみてください。その中に、求職者への「ここで働く意味」のヒントが必ずあります。
チェックポイント2:店の情報が検索で出てくるか
Googleで自店名を検索したとき、何が表示されますか。Googleビジネスプロフィールは整備されていますか。InstagramやX(旧Twitter)に、店の日常や料理へのこだわりが投稿されていますか。求職者がリサーチしたときに「この店は面白そう」「ここで働けば成長できそう」と感じられる情報量が必要です。
✅ ポイント:まずGoogleビジネスプロフィールを整備し、週に1〜2回、店の日常をSNSで発信する習慣をつけることから始めましょう。特別なことは不要で、「今日入荷した食材」「仕込みの裏側」で十分です。
チェックポイント3:スタッフが育つ仕組みが店にあるか
採用した後、スタッフが「この店でどう成長できるか」が見えていますか。キャリアパスも評価基準も曖昧なまま採用しても、入社後に「やりがいが見えない」と早期離職につながります。採用力は、実は定着率と表裏一体です。
✅ ポイント:最低限、「半年後・1年後にどんな仕事を任せたいか」を採用時点で伝えられる状態にしてください。「将来を見据えて人を育てる店」という姿勢が、求職者の応募意欲を高めます。
仕組み化が採用力と経営の両方を同時に変えた実例
冒頭でご紹介した50代の和食店のご主人は、その後、増益繁盛クラブのメソッドを実践しながら、少しずつ店の仕組みを整えていきました。
まず取り組んだのは、「自分にしかできない仕事」と「他の人に任せられる仕事」を書き出すワークでした。これをやってみると、実は自分がやらなくてもいい仕事が、1日の大半を占めていることがわかった、とおっしゃっていました。
仕込みの一部を整理してマニュアル化し、パートスタッフに任せる範囲を少しずつ広げたことで、現場から離れる時間が生まれ始めました。その時間を使って、店のビジョンを言語化し、Googleビジネスプロフィールを整備し、SNSで週2回の発信を始めました。
「仕組み化で現場を任せられる時間が増えた。そして、抱え込みグセが減り経営に集中できるようになった。月商も80万円上乗せできた。あのとき、まず自分の仕事を棚卸しすることから始めたのが、すべてのスタートでした」
和食店(男性・50代)
この方が特別な才能を持っていたわけではありません。「自分にしかできないことだけに集中する」という発想の転換と、店の物語を言語化して外に発信し始めたこと、その2つが、採用力と経営力の両方を同時に変えたのです。
理念型求人への切り替え方:具体的な3ステップ
求人改善 STEP 1
店のビジョン・物語を一文で言語化する
「どんなお客さんを、どんな価値で幸せにする店なのか」を、具体的な一文にまとめます。「地元の方が記念日に選んでくれる、素材の味を活かした和食の店」のように、誰に・何を・どんな体験を届けるかが含まれていることがポイントです。この一文が、求人票の冒頭に来ます。
⚠️ よくある失敗:「美味しい料理を大切に作っています」という抽象的な表現で終わってしまい、他の店と区別がつかない状態になること。具体的な客層・素材・提供価値を入れることで差別化できます。
求人改善 STEP 2
「ここで働くとどう成長できるか」をストーリーで示す
スタッフが1年後・3年後にどんな仕事を担えるようになるかを、できるだけ具体的に書きます。「1年後には仕込みを任せ、3年後には一部のコース提案を担当できる」のように、成長の道筋が見えると、求職者は「ここで働いたら自分が変わる」とイメージできます。
⚠️ よくある失敗:「やる気があれば活躍できます」という曖昧な表現に終始し、具体的な成長イメージを描かせられないこと。
求人改善 STEP 3
店の日常をSNS・Webで継続発信する
求人票だけを整えても、検索したときに何も出てこなければ意味がありません。InstagramやGoogleビジネスプロフィールに、店のこだわりや日常を週1〜2回発信し続けることで「調べたら出てくる店」になります。これは求職者への発信であると同時に、お客さんへの発信にもなります。一石二鳥の取り組みです。
⚠️ よくある失敗:発信を「集客のため」とだけ捉えて、料理写真の投稿にとどまること。スタッフの様子・仕込みの裏側・店主の考えを出すことで「この店で働いてみたい」と感じる層にリーチできます。
まとめ:セミナーで学ぶ前に、まず店の足元を整える
採用に困ったとき、「セミナーに行けば解決する」「求人媒体を変えれば変わる」と考えるのは自然なことです。でも、今回お伝えしたように、採用難の本質は「求人のテクニック」ではなく、「働きたいと思われる店になっているかどうか」という、経営そのものの問題です。
店の物語を言語化する、仕組み化で現場を整える、発信を続けて検索で見つけてもらえる状態をつくる――この3つを地道に積み重ねた先に、「ここで働きたい」と言われる店が生まれます。
テクニックを学ぶのは、その後でも遅くありません。むしろ土台が整った状態で学ぶからこそ、セミナーの内容が実践に結びつくのです。
私・ハワードジョイマンは、中小企業診断士として20年以上、全国の飲食店・美容室・小売店の経営者を指導してきました。採用・人材定着・仕組みづくりについても、店舗の現場に即した実践的なアドバイスをお伝えしています。
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