先日、ある居酒屋の店主さんからこんな相談をいただきました。
「ジョイマンさん、うちはもう20年この場所でやってきました。でも最近、地元の若い子が全然来なくなって、常連さんも高齢化して……どうすりゃいいんですかね」
話を聞けば聞くほど、料理の腕は本物で、地元の食材へのこだわりも筋金入り。仕入れ先との関係も20年分の信頼がある。なのに、売上はじわじわ右肩下がり。
このご相談、実は毎年何十件と届きます。そして多くの場合、原因は「料理の質」でも「立地の悪さ」でもない。「自分のお店を何屋だと定義しているか」——そこに根本があります。
今日はこの「事業再定義」という話を、僕自身の体験も交えながら書いてみます。
📋 この記事でわかること
- 「商品売り」の定義が売上の天井を作っている理由
- 事業を「問題解決業・要望実現業」と再定義する具体的な考え方
- 既存リソースで新しい収益源を生み出した全国の実例
- 今日から使える「事業再定義」の3つのステップ
こんな方におすすめ
- ✅ 「うちは飲食店だから飲食しかやれない」と感じている方
- ✅ 店内売上が頭打ちで次の一手が見えていない方
- ✅ 忙しいのに手元にお金が残らないと感じている方
- ✅ 新規事業を考えたいが、何から始めればいいか分からない方
- ✅ 閉店していく同業者を見て、自店の将来に漠然とした不安を感じている方

目次
「飲食店」という定義が、売上の天井を作っていた
少し昔の話をします。
僕がコンサルを始めたばかりの頃、ある中華料理店の店主さんと話していたとき、こんなことを言われました。「ジョイマンさん、うちは中華屋です。中華料理を出すのが仕事です」と。
その言葉自体は間違っていない。でも、その定義が「何を売るか」の天井になっていたんです。
たとえばその店には、毎週金曜の夜に会社帰りのサラリーマンが10人ほどのグループで来ていた。目的は「仕事終わりにガス抜きをして、明日への英気を養うこと」。中華料理そのものが目的じゃない。でもお店側は「中華料理を売っている」という定義で動いているから、注文が終わったらあとは放置。ドリンクのおかわりも取りに来ない。
お客さんが本当に求めているものを見ていない——これが「商品売り」の限界です。
「お客さんは商品を買いに来ているのではなく、自分の問題を解決しに来ているか、自分の願いを叶えに来ているかのどちらかです。この視点に立てるかどうかで、事業の幅は10倍変わります」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店コンサルタント)
これは僕が1975年に清水で生まれ、自営業の家で育ちながら、後に市役所で働き、現場でイタリアンレストランの修行をし、そして独立して20年以上・全国の飲食店・美容室・小売店を支援してきたなかで何度も確信してきたことです。
アメリカン・エキスプレスから学ぶ「事業の定義の変え方」
「事業再定義」というと難しく聞こえるかもしれませんが、歴史を見ると実はシンプルな話です。
アメリカン・エキスプレスはもともと「運送業」でした。それが「保険業」になり、「トラベラーズチェック」になり、今や「クレジットカード業」として世界中に展開しています。業種業態は何度も変わっている。でも一貫しているのは「お客さんの移動・決済にまつわる不安を解決する」という軸です。
これが「問題解決業」の発想です。
翻って、あなたのお店はどうでしょう。
「焼肉を売っている」——ではなく、「家族が特別な時間を過ごせる場所を提供している」のかもしれない。
「ラーメンを売っている」——ではなく、「疲れたビジネスマンが一人でほっと一息つける時間を売っている」のかもしれない。
「カフェをやっている」——ではなく、「子連れのお母さんが気兼ねなく過ごせる居場所を作っている」のかもしれない。
この「再定義」ができると、次の一手が一気に見えてきます。
「家族の特別な時間を提供している」と定義しているなら、バースデーケーキの手配代行も、記念日用の写真撮影サービスも、全部その定義の範囲内です。「運送業」ではなく「問題解決業」として見れば、次の打ち手は無限に広がる。
✓ ここまでのポイント
- 「商品売り」の定義は売上の天井を作る。お客さんは「商品」を買いに来ているのではなく「問題の解決」や「願いの実現」を求めている
- アメリカン・エキスプレスのように「お客さんの問題解決業・要望実現業」として事業を再定義すると、次の打ち手が無限に広がる
- 同じリソース(立地・顧客・スタッフ・ノウハウ)でも、定義を変えるだけで収益の入口が変わる
全国の実例|「定義を変えた」だけで収益源が増えた店たち
これは理屈の話ではありません。実際に事業を再定義して、店の形を変えた方が全国にたくさんいます。
「お弁当を売っているのか、製薬会社のランチ問題を解決しているのか——どちらで考えるかで、次の行動がまったく変わりました。今は朝50個の安定注文が入るルートができて、店内売上が落ちる日でも収益がゼロになる怖さがなくなりました」
千葉県・お好み焼き店経営者(増益繁盛クラブメンバー)
この方は「お好み焼き屋」という定義を一度横に置いて、「地域の企業のランチ問題を解決する業者」として動いた。製薬会社向けの弁当(単価2,500〜3,000円)を朝50個受注する安定ルートを作った事例です。設備投資はほぼゼロ。必要だったのは「定義を変える勇気」だけでした。
また、奈良県のうどん店では「麺の幅を広くする」という、既存要素の組み合わせを変えただけでSNSでバズが起き、注文が1.5倍に。「うどんを売っている」から「話題になる体験を売っている」への意識の変化が、この結果を生んでいます。
「月商130万円で頭打ちだった頃は、うちは定食屋だからこれ以上は無理だと思っていました。でも、地域にない『3つ同時盛り』というコンセプトを作ったら、客単価と集客数が同時に上がって、今は450万円まで来ました」
和歌山県・飲食店経営者(増益繁盛クラブメンバー)
「定食屋」という定義ではなく「地域にない体験を作る飲食業」と再定義したことで、全く新しいメニューコンセプトが生まれた事例です。
今日からできる「事業再定義」3つのステップ
では、具体的にどう動けばいいか。僕が会員さんにお伝えしている手順を簡単に紹介します。
事業再定義 STEP 1
「あなたのお客さんが本当に解決したい問題・叶えたい願いは何か」を書き出す
まずメニューや商品の話は一切忘れて、お客さんが来店する「前後の状況」を想像してください。来る前はどんな気持ち?帰った後、どんな状態になっていてほしい?この問いに正直に向き合うと、自店が本当は何を提供しているかが見えてきます。
⚠️ よくある失敗:「うちに来るお客さんは美味しいものを食べたいだけ」と表面だけで止まってしまうこと。その一歩先——「なぜ美味しいものを食べたいのか」まで掘り下げることが肝心です。
事業再定義 STEP 2
自店の「既存リソース」をリストアップする
顧客リスト、立地、スタッフのスキル、仕入れ先との関係、厨房設備、料理のノウハウ——今あるものをすべて棚卸しします。カツカレーがカツ+カレーの組み合わせで生まれたように、新しい収益源は「ゼロから作るもの」ではなく「既存要素の新しい組み合わせ」です。
⚠️ よくある失敗:「うちには特別なリソースがない」と思い込むこと。20年以上のコンサル経験からいうと、どの店にも必ず独自のリソースがあります。見えていないだけです。
事業再定義 STEP 3
「お賽銭箱を複数」の発想で収益の入口を設計する
1つの事業・1つの収益源に100%依存する構造は、環境が変わった瞬間に脆い。STEP1で見えたお客さんの「問題・願い」と、STEP2の「リソース」を組み合わせて、店内売上以外の収益経路を少なくとも1つ設計します。デリバリー、法人向け弁当、物販、サブスク、イベント開催——形はなんでも構いません。
⚠️ よくある失敗:一度に全部やろうとして何も完成しないこと。まず1つの新しい収益経路だけに集中して、軌道に乗せてから次を足すのが正解です。
この3ステップを回すと、「飲食店だから飲食しか売れない」という思い込みから抜け出す最初の一歩が踏めます。
まとめ|「何屋か」ではなく「誰の何を解決するか」で考える
冒頭の居酒屋の店主さんの話に戻ります。
あれから半年、その方は「常連さんの晩年の楽しみを一緒に作る業」として事業を再定義しました。具体的には、高齢の常連さん向けに「月に1回の食事会」を企画し、家族への連絡サービスも始めました。新しい設備投資はゼロ。でも、来店頻度が上がり、常連さんからの紹介で新しいお客さんも来るようになった。
「商品を売ること」から「お客さんの問題を解決し、願いを叶えること」へ——この視点の転換が、売上の天井を取り払います。
人口が減り続けるこれからの時代、業種業態の枠にしがみついていると、縮小する市場のなかで競争するしかなくなります。でも「問題解決業・要望実現業」として再定義できた経営者は、時代の変化に合わせて形を変えながら、長く繁盛し続けることができる。
20年以上・北海道から沖縄・アメリカ在住の日本人経営者まで、全国で実践してきた方々がその証明です。
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「何から始めればいいか分からない」という状態のまま時間が経つのが、一番もったいない。どんな小さな一歩でも、一緒に踏み出しましょう。お気軽にどうぞ。