「新しい収益源を作りたいけど、うちは飲食店だから……」
「美容室として15年やってきたから、美容以外のことはできない気がして」
「コロナのときに売上がゼロになって懲りたのに、結局また店内売上一本に頼っている」
こういった声を、全国の経営者さんからよく聞きます。危機感はある。でも「うちの業種でできること」の枠から出られない。その枠をつくっているのは、実は市場でもなく、立地でもなく、経営者自身の頭の中にある「業種の壁」だったりします。
この記事では、店舗ビジネスの多角化を具体的なステップで解説します。「ゼロから新事業を立ち上げる」のではなく、すでに手元にある資源を使って第2・第3の収益源を設計する発想法です。特別な設備投資も、スタッフの大幅増員も必要ありません。
📋 この記事でわかること
- なぜ「業種業態の壁」が収益の天井になるのか、その構造的な理由
- 多角化のアイデアを生み出す「既存要素の組み合わせ」発想法
- 第2・第3の収益源を具体的に設計する3つのステップ
- 多角化に取り組む際に陥りやすい失敗パターンと回避策
こんな方におすすめ
- ✅ 店内売上だけに依存していて「次の柱が欲しい」と感じている経営者
- ✅ コロナ・物価高・人手不足など外部環境の変化に不安を感じている方
- ✅ 「何か新しいことを始めたいが、アイデアの出し方がわからない」方
- ✅ 値引きや広告費に頼らず、利益率の高い収益構造を作りたい方
- ✅ 現場から抜け出せない状況を変えるヒントを探している飲食店・美容室オーナー

目次
「業種の壁」が収益の天井をつくっている
少し想像してみてください。明治時代、人力車を引いていた業者さんは「移動手段の提供業」でした。しかし多くの人が「人力車業」と自分の仕事を定義していたため、自動車や電車が普及したとき、仕事ごとなくなってしまいました。
一方、「移動手段の提供業」と定義していたとしたら? タクシー、バス、旅行代理店、宅配サービス——選択肢はいくらでも広がっていたはずです。
これは飲食店や美容室でも同じことが起きています。「焼肉店だから焼肉だけ」「カフェだからカフェだけ」という定義が、事業の可能性を閉じているのです。
アメリカン・エキスプレスという会社をご存知でしょうか。もともとは運送業で創業し、その後保険業、トラベラーズチェック、そしてクレジットカードへと業態を変えてきた会社です。「お客さんの安心と利便性を提供する会社」と定義していたからこそ、時代に合わせて事業の形を変え続けられた。業種の縛りがなかったわけです。
「お客さんはあなたの『業種』を買いに来ているわけじゃありません。自分の悩みを解決したくて、自分の望みを叶えたくて来ているんです。だとすれば、その解決手段は一つじゃなくていい。むしろ複数あったほうが、お客さんにとっても経営者にとってもいいんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店グループ総代表)
多角化というと「大きな投資が必要」「リスクが高い」と感じる方が多いのですが、発想の転換が先です。手法は後からついてくる。まずは「うちは何を売っている店か」の定義を見直すことから始めましょう。
多角化のアイデアは「組み合わせ」から生まれる
新規事業のアイデアというと、「まったく新しい何か」を考えようとして思考が止まる方が多いです。でも実際には、世の中の大半のヒット商品・ヒットサービスは「既存要素の新しい組み合わせ」から生まれています。
カツカレーは? カツ+カレーです。消しゴム付き鉛筆は? 鉛筆+消しゴムです。コンビニの宅配ロッカーは? コンビニ+宅配の受け取り場所の組み合わせ。
店舗ビジネスの多角化も同じ発想でできます。自分のお店がすでに持っているリソース——顧客、立地、スタッフのスキル、調理設備、ブランド——と、他業種の要素を組み合わせると、新しい収益源が見えてきます。
実際に、千葉県のお好み焼き店さんがこの発想を実践されました。
「製薬会社の営業担当者(MR)向けに、1個2,500〜3,000円のお弁当を朝50個受注する仕組みを作りました。店内客が少ない午前中に厨房を活用できて、月の安定収入が大幅に増えました」
千葉県・お好み焼き店オーナー(増益繁盛クラブメンバー)
「お好み焼き店」という定義のまま考えていたら、このアイデアは出てきません。「厨房設備と調理スキルがある食を提供する事業者」という定義で考えたからこそ、法人向け弁当という新たな柱が生まれたわけです。
✓ ここまでのポイント
- 「業種の壁」は市場や立地ではなく、経営者の頭の中にある定義から生まれている
- 多角化のアイデアは「ゼロから新発明」ではなく「既存要素の組み合わせ」で十分
- 自店のリソース(顧客・立地・設備・スキル)を棚卸しすることが出発点
多角化を実現する3つのステップ
では、実際にどう進めればよいか。わたしが20年以上、全国の飲食店・美容室・小売店の経営者さんに伴走してきた経験から整理した3ステップをお伝えします。
多角化 STEP 1
自店のリソースを棚卸しする
まず、お店がすでに持っているものをすべて書き出します。「顧客リスト(誰が来ているか)」「立地の特性(駅近・住宅街・オフィス街)」「設備(厨房・駐車場・広さ)」「スタッフのスキル」「自分の専門知識」「お客さんからよく褒められること」——このリストが多角化の材料になります。多くの経営者さんは、この棚卸しをしたことがないまま「うちには何もない」と思い込んでいます。書き出してみると、意外なほど豊富な資源があることに気づきます。
⚠️ よくある失敗:「売上に直結しないもの」をリソースから外してしまうこと。お客さんとの関係性・口コミの内容・常連客のライフスタイルなど、数字に出ない資源こそ多角化のヒントになります。
多角化 STEP 2
「お客さんの問題解決・要望実現」で事業を再定義する
STEP 1で出たリソースをもとに、「自分のお店が本当に解決していること・叶えていること」を言葉にします。「美味しいものを提供する」ではなく、「仕事帰りに一人でほっとできる時間を作る」「家族で記念日を特別な体験にする」「毎朝のランチ選びの悩みをなくす」など、お客さんの感情や生活の文脈で定義し直す。この再定義が、新しい商品・サービスの発想を広げます。
⚠️ よくある失敗:「うちのお客さんが何を求めているか」を経営者の思い込みで決めてしまうこと。GoogleビジネスプロフィールやSNSのコメント、実際の会話から拾ったお客さんの言葉を使うのが正確です。
多角化 STEP 3
「お賽銭箱を複数」作る発想で収益経路を設計する
自店の定義が広がったら、具体的な収益経路を複数設計します。わたしはこれを「お賽銭箱を複数持つ」と表現しています。神社のお賽銭箱が1つしかなかったら、その1つが壊れたら収入がゼロになります。でも境内に複数の社があれば、1つが使えなくなっても残りから収入が入ってくる。
店舗ビジネスで言えば、①店内売上、②デリバリー・テイクアウト、③法人向け(MR弁当・ケータリング・社員食堂)、④物販(商品・調味料・食材キット)、⑤サブスク(定期購入・通い放題)、⑥情報販売(レシピ・ノウハウ)——こういった経路を組み合わせる。1つの経路が20%ずつあれば、1本失っても80%は残ります。
⚠️ よくある失敗:一度に全部やろうとして、どれも中途半端になること。まず1本、既存の店内売上の延長で作れる収益経路(物販か法人向けか)を1つだけ選んで試すのが正解です。
比較:業種の壁を守るか、乗り越えるか
❌ 「うちは飲食店だから飲食だけ」という定義のまま動く
- 収益が店内売上の一本柱になり、外部環境の変化に脆い
- 席数・営業時間・立地に売上の上限が縛られる
- 競合他店と「同じ土俵」で戦い続けるため、価格競争に巻き込まれやすい
✅ 「お客さんの問題解決業・要望実現業」として事業を再定義する
- 店内売上以外の収益経路を複数設計できる
- 同じスタッフ・同じ設備で売上の天井を突破できる
- 業種の垣根を超えた発想でサービスを組み合わせるため、他店と比較されにくくなる
多角化の落とし穴——「分散」と「多角化」の違い
ここで一つ、大切なことをお伝えします。多角化は「手当たり次第に事業を増やすこと」ではありません。むしろ、それをやると経営は確実に苦しくなります。
奈良県のうどん店のオーナーさんは、SNS経由の注文を1.5倍に増やしました。やったことは、麺の幅を少し広めに変えただけです。「既存のメニューの組み合わせを変える」というシンプルな一手が、SNSでのバズにつながり、来店客数が増えました。設備投資もゼロ。新事業の立ち上げでもありません。でもこれは立派な「差別化による収益拡大」です。
多角化の本質は「手数を増やすこと」ではなく「お客さんとの接点と収益経路を増やすこと」。この違いをはっきり意識してください。
チェックポイント①:「やること」より「やめること」を先に決める
新しい収益源を作ろうとするとき、経営者の多くは「何を加えるか」だけを考えます。でも先に「何をやめるか・手放すか」を決めないと、時間も体力も分散して、新しいことが定着しません。
✅ ポイント:1週間の時間の使い方を15分単位で書き出し、「自分じゃなくてもできる仕事」を洗い出す。その時間を多角化の設計に充てる。
チェックポイント②:既存のお客さんを起点にしているか
「新しい事業=新しいお客さんを開拓する」と思い込みがちですが、多角化の初手で最もリスクが低いのは「今のお客さんにもっと喜ばれる別の形を作る」ことです。
✅ ポイント:「今のお客さんが、うちに来る以外でどんなことにお金を使っているか」を観察する。そこに多角化のヒントが眠っています。
チェックポイント③:新収益源の「利益率」を先に計算しているか
売上は増えても利益が残らない多角化は、むしろ体力を削ります。新しい収益経路を設計するとき、必ず粗利率と自分の労働時間の関係を先に計算してください。
✅ ポイント:「この仕組みで月10万円の利益を出すには、何個売って、何時間かかるか」を事前に試算する。試算してから動くのと、動きながら考えるのでは、結果が大きく変わります。
「多角化を怖いと感じる経営者さんに、いつも聞く質問があります。『今の収益源が明日突然なくなったとしたら、あなたのお店は3ヶ月後も存在していますか?』——この質問に自信を持って『はい』と答えられる状態を作ることが、多角化の本当の目的です」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店グループ総代表)
まとめ:業種の壁を超える第一歩
店舗ビジネスの多角化は、大きな投資や新しいスキルがなくても始められます。出発点は「業種の定義を変えること」と「手元のリソースを棚卸しすること」の2つだけです。
ステップを振り返ると——
- 自店のリソース(顧客・立地・設備・スキル)を書き出す
- 「お客さんの問題解決・要望実現」という視点で事業を再定義する
- 「お賽銭箱を複数」の発想で、まず1本だけ新しい収益経路を試す
そして多角化を進めながら必ずチェックしてほしいのが、「やめること」を先に決めること、今のお客さんを起点にすること、利益率を事前に試算することの3点です。
わたし自身、創業から20年以上、北海道から沖縄、アメリカ在住の日本人経営者まで、全国の飲食店・美容室・小売店のオーナーさんに伴走してきました。「業種の壁を超えた瞬間に視界が開けた」という声を、本当に何度も聞いてきました。月商300万円から月商2億5,000万円を達成した飲食店経営者も、増益繁盛クラブのメンバーとしてその変化を経験した方です。
「どこから手をつければいいかわからない」という段階の方には、まず無料メルマガから入ることをおすすめしています。全12回のメールセミナー「繁盛店になるための12のステップ」では、多角化を含む売上・利益の仕組みづくりを、専門用語なしでお届けしています。
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