先日、こんな相談をいただきました。
「ジョイマンさん、セルフオーダーシステムを入れようと思っているんですが、どれを選べばいいかわからなくて。タブレット型とQRコード型があって、業者によって言うことがバラバラで……」
静岡市清水区で20年以上、飲食店と美容室の経営サポートをしてきたハワードジョイマンです。
セルフオーダーシステムの相談、最近本当によくいただきます。人手不足が深刻になってきて、「とにかく何かツールを入れて解決したい」という気持ち、すごくよくわかります。ただ、正直に言わせてください。システム選びの前に、もっと大事な話があります。
この記事では、セルフオーダーシステムの比較の視点をお伝えしながら、人手不足の「本当の原因」と、そこへの対処法をセットで解説します。機能の話だけで終わらせず、「なぜスタッフが集まらないのか」「どうすれば定着するのか」まで踏み込んで書きました。
📋 この記事でわかること
- セルフオーダーシステム(タブレット型・QRコード型)の比較と選び方の視点
- なぜ「システムを入れただけ」では人手不足が解決しないのか
- 求職者に「ここで働きたい」と思わせる「理念型求人」への切り替え方
- スタッフが辞めない店の仕組みの作り方
こんな方におすすめ
- ✅ セルフオーダーシステムの導入を検討していて、どれを選べばいいか迷っている飲食店オーナーの方
- ✅ 人手不足で悩んでいるが、求人を出してもなかなか応募が来ない方
- ✅ アルバイトや社員がすぐ辞めてしまい、採用コストがかさんでいる方
- ✅ システムや設備に投資するお金はあるが、それで本当に解決するのか不安な方
- ✅ 「忙しいのに手元にお金が残らない」状態を何とかしたい方

目次
セルフオーダーシステム、主な2タイプの比較
まず、現在主流の2つのタイプを整理します。
❌ 「どちらが良いか」を業者の説明だけで決める
- 営業トークに乗せられ、自店に合わない機能を高額で契約してしまう
- 月額費用が利益を圧迫し、「入れたけど元が取れない」状態に
- スタッフの使い方が定まらず、結局フォローの手間が増える
✅ 自店の客層・客単価・スタッフ構成を起点に選ぶ
- 必要な機能に絞ることでコストを抑えられる
- 導入後の運用がシンプルで、スタッフへの負荷が少ない
- 「ツールを入れた目的」が明確なので、効果測定もできる
チェックポイント1:タブレット型は「高単価・接客重視」の店向け
テーブルに専用タブレットを設置するタイプです。見た目の高級感があり、写真付きメニューで追加注文を促しやすい。焼肉店やファミリー向けの中規模店では導入実績が多いです。ただし、端末費用・保守費用がかかるため、月商に対してコストの割合が重くなりがちです。
✅ ポイント:席数が多く(30席以上)、客単価が3,500円超で回転率より滞在時間が長い業態に向いています。導入前に「月額コストが粗利の何%になるか」を必ず計算すること。
チェックポイント2:QRコード型は「低コスト・スモールスタート」向け
テーブルにQRコードを置き、お客さんが自分のスマホで読み取って注文するタイプです。端末費用がかからず、初期投資が抑えられます。ラーメン店・カフェ・小規模居酒屋など、月商300万円前後の店でも導入しやすい。一方、スマホ操作が苦手なご年配のお客さんが多い業態では、フォローの手間が増えることも。
✅ ポイント:客層の年齢層と、お客さんのスマホ利用状況を事前に確認すること。「使えない方へのフォロー役」を誰が担うかをシステム導入前に決めておく。
チェックポイント3:「注文ミスの削減」だけが目的なら、別の手段も検討する
セルフオーダーを検討する理由として「注文ミスを減らしたい」「ホールの人手を減らしたい」をよく聞きます。ただ、注文ミスの多くは「オーダーの取り方・確認フロー」の問題であり、仕組みを整えるだけで改善できるケースも少なくありません。
✅ ポイント:まずは「現在の注文ミスが週何件あり、そのコスト(廃棄・謝罪・再提供)はいくらか」を数字で把握する。その金額とシステムの月額費用を比べて、投資対効果を判断すること。
✓ ここまでのポイント
- タブレット型は高単価・多席数の業態向け。QRコード型はスモールスタートに向いているが、客層との相性確認が必須。
- 「とにかくシステムを入れる」前に、月額コストが粗利の何%になるかを計算することが先決。
- 注文ミス削減が目的なら、まず現状のコストを数字で把握し、システム導入との費用対効果を比べること。
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システムを入れても人手不足が解決しない本当の理由
ここからが、この記事で一番お伝えしたいことです。
セルフオーダーシステムを入れると、確かにホールの注文取りの手間は減ります。でも、「採用できない」「すぐ辞める」という問題は、システムでは解決しません。
なぜか。
人手不足の根っこにある問題は、「この店で働く意味が伝わっていない」ことだからです。
求人サイトに「時給1,100円・週2日〜・交通費支給」と書いて募集している。これ、正直どの店も同じに見えます。求職者の立場で考えると、「どこで働いても条件が似たようなもの」なら、家から近いか、シフトが楽そうかで選ぶしかない。そうなると、比較の軸は「条件の良し悪し」だけになってしまう。
そしてもう一つ、見落とされがちな視点があります。
求職者は、「この店、大丈夫かな?」と調べています。Googleで店名を検索して、口コミを見て、SNSを見て、「繁盛していそうか」「将来性がありそうか」を無意識にチェックしている。お客さんを集める仕組みが整っていない店は、求職者からも「この店、危ないかも」と思われてしまう。
つまり、人手不足は「求人の出し方」だけの問題ではなく、「働きたいと思われる店になっているか」という経営全体の問題なんです。
「採用が上手くいかない店主さんに共通しているのは、求人票に『給与・休日・交通費』しか書いていないことです。そこに書いてあるのは条件であって、その店で働く理由じゃない。求職者が知りたいのは、この店はどんな人のために、どんな価値を届けているのか、そしてここで働くと自分はどう成長できるのか、です」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所代表)
「理念型求人」への切り替え方
では、具体的に何を変えればいいのか。
まず、求人票に書く内容を根本から見直します。「条件を並べる求人」から、「この店のストーリーを伝える求人」に切り替えることを、私は「理念型求人」と呼んでいます。
理念型求人 STEP 1
「どんなお客さんを、どんな価値で幸せにする店か」を言葉にする
「こだわりの和食を提供しています」では伝わりません。たとえば「週に一度だけ、自分へのご褒美に来てくれるお客さんに、ほっとできる時間を届ける店」という具体的な像まで言語化する。これがあると、求職者は「自分はここで働きたいか」を判断できます。
⚠️ よくある失敗:「美味しい料理を提供する」「お客様に喜んでいただく」という当たり前の言葉で止まってしまう。どんな客に、どんな場面で、何を届けるかまで掘り下げること。
理念型求人 STEP 2
「ここで働くと、どう成長できるか」を書く
給与より、自分が成長できるかを重視する求職者は思ったより多い。「入って3ヶ月でホールを任せます」「半年後には仕込みを覚えられます」といった具体的な成長の道筋を示す。求職者に「入社後の自分」をイメージさせることが大切です。
⚠️ よくある失敗:「やる気のある方歓迎」で終わらせる。具体的なステップがないと、求職者には「何をどこまでやればいいか」が見えない。
理念型求人 STEP 3
店主・既存スタッフの「顔と声」を見せる
求人サイトでも、Googleビジネスプロフィールでも、SNSでもいい。「どんな人がいる店か」がわかるコンテンツを作る。写真1枚、短い紹介文1本あるだけで、求職者の安心感は大きく変わります。
⚠️ よくある失敗:「写真を撮るのが面倒」と後回しにする。スマホで撮ったカジュアルな写真で十分。大切なのはプロ品質より「人の雰囲気が伝わること」。
こうした取り組みは、飲食店の経営コンサルに相談する際によく出てくる悩みの上位でもあります。「求人と採用」は、集客や販促と切り離して考えることはできない、経営全体の問題です。
入ったあとに「辞めない仕組み」を作る
採用できたとしても、すぐ辞められては意味がありません。離職率が高い店の多くに、共通する構造があります。「オーナーが何でも抱え込んでいて、スタッフに任せられる仕事が明確になっていない」という状態です。
スタッフの立場で考えると、「自分が何をすれば評価されるのかわからない」「頑張ってもオーナーが全部やってしまう」という環境では、やりがいを感じにくい。
私がコンサルティングで最初に取り組むのは、「自分にしかできない仕事」と「他の人に任せられる仕事」を分けること。これを整理するだけで、スタッフに権限を渡す準備ができ、「任せてもらえる」という感覚が生まれます。
たとえば、仕込みの一部をスタッフに任せ、チェックリストを用意する。発注の一部を任せて、週1回確認する。こういった小さな「任せる仕組み」の積み重ねが、スタッフの定着につながります。
「採用でも販促でも、仕組みが先です。人を入れてから考えるのではなく、『この仕事はこの手順でやる』が言語化されている店は、スタッフが育ちやすい。そしてスタッフが育つ店は、求職者からも選ばれます」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所代表)
こうした「仕組み化」の重要性は、飲食店の集客コンサルに依頼する前によくある質問でも触れていますが、採用においても同じ考え方が当てはまります。
「フル稼働しなくても回る体制に近づいた、毎日に目的地ができた」
オーナー1人+アシスタント(女性・40代)|客単価改善で月商230万達成
この方が変わったのは、「何でも自分がやらなければ」という思い込みを手放したことがきっかけです。アシスタントに任せる仕事を整理し、自分は「経営判断と接客の質」に集中する体制を作った。その結果、フル稼働しなくても売上が安定し、月商230万円を達成されました。人手が少ない状態でも、仕組みがあれば動ける。その好例です。
セルフオーダーシステムと「働きたい店作り」をセットで考える
話をセルフオーダーシステムに戻します。
システムを入れること自体は否定しません。注文業務の効率化は確かに効果があります。ただ、ツールは「仕組みの一部」に過ぎない、ということは押さえておいてほしい。
セルフオーダーで注文業務を効率化した分、スタッフが「お客さんと話す時間」「料理の説明をする時間」に使えるようにする。その結果、客単価が上がり、リピート率が上がる。そういう使い方をしている店が、本当の意味でシステムを活かしています。
逆に、「システムを入れたら人件費を削れる」という発想でスタッフを減らしすぎると、残ったスタッフの負担が増え、離職につながります。結果的に「また採用活動」というループに入ってしまう。
システム選びの比較をするときに、「このシステムを入れることで、スタッフは何をする時間が増えるか」を必ず問いかけてみてください。その答えが出ない状態で導入を決めると、費用だけかかって現場が混乱する可能性があります。
また、採用・定着の取り組みと並行して、お客さんを集める仕組みを整えることも大切です。繁盛している店には求職者も集まります。飲食店コンサルを選ぶ際の失敗しないチェックポイントも参考に、経営の土台から整えていくことをおすすめします。
まとめ:システム選びは「経営の整理」の後でいい
この記事でお伝えしたかったことを整理します。
セルフオーダーシステムの選び方としては、客層・客単価・席数に合ったタイプを選び、月額コストと粗利のバランスを必ず計算すること。タブレット型は高単価・多席数向け、QRコード型はスモールスタートに向いています。
ただし、それ以上に大切なのは、「なぜ人が集まらないのか」「なぜ辞めてしまうのか」の本質に向き合うことです。求人票を「条件の羅列」から「理念とストーリーの伝達」に切り替えること。スタッフが育つ仕組みを作って、権限を渡せる環境を整えること。この2つが土台にないと、どんなシステムを入れても問題は繰り返されます。
「売上より利益」を重視するなら、採用コストと離職コストを削ることも、れっきとした利益改善です。ツールに頼る前に、働きたいと思われる店の仕組みを作ることが、長期的に一番コストパフォーマンスの高い投資です。
今日から動けることとして、まずは自店の求人票を見直してみてください。「条件しか書いていなかった」と気づいた方は、ぜひ「どんなお客さんを、どんな価値で幸せにする店か」を言葉にするところから始めてみてください。
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