「新しい業態を始めれば、売上が増えるはず」
「今の店だけでは不安だから、もう一本の柱を作りたい」
「でも、何から手をつければいいのか、全然わからない」
こういうご相談、本当によくいただきます。思い当たる方は多いんじゃないかと思います。
新業態を立ち上げたいと考える飲食店経営者さんの多くは、実はその前の段階で止まっています。「何をやるか」を考える前に、「なぜ今の店の資金繰りが苦しいのか」という根っこを掘り下げていないんです。
今日は、静岡・清水のオフィスでの私の一日の流れをお見せしながら、新業態立ち上げを相談するときに絶対に外せない「収益の土台」の話をします。舞台裏で何を考え、何を確認しているのか、正直にお伝えしようと思います。
📋 この記事でわかること
- なぜ「新業態を作れば解決する」は危険な発想なのか
- 収益の土台として設計すべき「お賽銭箱を複数持つ」という考え方
- 千葉県のお好み焼き店が実践した、新収益源の具体的な作り方
- 新業態の相談をする前に自店で確認すべき構造的チェックポイント
こんな方におすすめ
- ✅ 忙しく動いているのに月末の手元にお金が残らない飲食店経営者の方
- ✅ 新業態・第二の収益源を作りたいが何から始めればいいかわからない方
- ✅ 店内売上の波が大きく、資金繰りが安定しない状況に不安を感じている方
- ✅ ランチやディナーの固定費に対して売上が追いついていないと感じている方
- ✅ 値引き・クーポン以外の方法で利益を増やしたいと考えている方

目次
朝10時、オフィスのホワイトボードの前で始まる「構造の棚卸し」
静岡市清水区のオフィスに来るのは、毎朝10時ごろです。新清水駅から歩いて1分という立地ですが、私はあえて少し早めに着いて、その日の相談に向けて頭を整理する時間にしています。
この日も、午前中の相談は「新業態を立ち上げたい」という飲食店の経営者さんでした。ランチ営業で月商300万円台が続いており、売上を伸ばすために新しい展開を考えている、という内容です。
ただ、相談を聞き始めてすぐ気になったのは、「何をやるか」が先行していて、「今の収益構造がどうなっているか」が把握されていなかったことでした。
私がまず手を動かすのは、ここです。ホワイトボードに「収益の入り口」を全部書き出してもらう。今の売上が、どこからどう入っているか。
多くの飲食店経営者さんが、この時点で初めて気づきます。収益の入り口が「店内売上の1本」しかない、ということに。
1本だけで成立しているということは、その1本が細くなった瞬間に、キャッシュが詰まるということです。コロナで実感した方も多いと思いますが、あれは極端な例であっても、同じ構造的リスクは今も変わらず存在しています。
日本の人口は今後減少が続きます。江戸時代には約4,000万人だった人口が、近代に1億3,000万人まで増えた。その増加の恩恵を受けてきた「人が来れば売れる」時代は、もう終わりを迎えています。単一の収益経路に依存していることが、構造的なリスクになっているという現実を、ここから話し始めます。
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午前中の相談で必ず確認する「やめられる出費の棚卸し」
新業態の話に入る前に、私が必ずやってもらうことがもう一つあります。「やめられる出費」を書き出すことです。
固定費の圧迫というのは、売上が下がって初めて気づくことが多い。でも、実は売上が落ちていなくても、ずっと利益を食っていることがある。広告費、有料ポータルサイトの掲載料、更新をやめた予約システムの維持費、使っていない設備のリース料。こうしたものが積み重なっていると、売上があっても手元には残りません。
「やることを増やす前に、やめることから決める」というのが、私の口癖のようになっていますが、新業態を立ち上げるときも全く同じです。今の固定費が整理されないまま新しいコストをかけると、収益の土台がより不安定になる。
この午前中の2時間で、経営者さんは「あ、そういうことか」という顔をされます。新業態の話をするために来たのに、まず今の構造を整理するところからだったのか、と。でもここをスキップすると、どんなに面白い新業態を作っても、土台が緩いまま建物を建てることになります。
✓ ここまでのポイント
- 収益の入り口が店内売上の1本だけの構造は、売上が落ちた瞬間に資金繰りが詰まる根本原因になる
- 新業態を考える前に、「やめられる出費の棚卸し」で固定費の圧迫を先に解消することが、収益の土台を作る第一歩
- 人口減少が進む時代に、単一収益源への依存は構造的リスクであると認識することが出発点になる
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昼過ぎ、会員事例の振り返りで見えてきた「お賽銭箱を複数持つ」発想
午後は、全国の会員さんの実践事例を振り返る時間にあてています。増益繁盛クラブの会員さんから届いた報告を読みながら、どのアプローチが今の相談者さんに響くか、整理しています。
この日、改めて読み直したのが、千葉県のお好み焼き店の事例でした。
「MR弁当で新規収益源を確立。製薬会社向けの弁当を朝50個受注する安定収益ルートを構築し、単価2,500〜3,000円の法人需要を店内売上とは別の"お財布"として持てるようになった」
千葉県・お好み焼き店経営者(事例)
この事例が面白いのは、「お好み焼き店が弁当を作った」という発想の転換だけじゃありません。製薬会社という法人向けに、朝の段階で50個の注文が確定している、という仕組みにあります。
店内売上は、その日開けてみるまでどれだけ入るかわかりません。天気、曜日、季節、競合の動向。あらゆる要素で変動します。でも、朝の時点で「今日は50個×2,500円が確定している」という収益源があれば、経営の見通しがまるで違います。
私が「お賽銭箱を複数持つ」と表現するのは、これです。店内売上、デリバリー、法人向けの食事提供、物販(店のブランドを冠した食材や備品)、サブスク形式の定期お届け。1つのお店でも、収益の入り口を複数作ることができる。
1つの経路で全体の20%ずつ作れれば、1本失っても残りの80%は生きています。これが「収益の土台」というものです。
ちなみにこの千葉のお好み焼き店の経営者さんは、特別な設備投資をしたわけではありません。今持っているキッチンと、今持っているレシピと、今積み上げてきた「料理の信頼」を使って、新しい経路を開いた。これが重要なポイントです。
「新業態を立ち上げる、という言葉には、どこか"ゼロから何か新しいものを作る"というイメージが先行しやすい。でも実際に収益の土台を変えた経営者さんは、今あるものを別の経路につないだだけ、という方が多いんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所代表)
新業態を考えるとき、私が必ず聞くのは「あなたのお店が本当に解決していることは何ですか?」という問いです。料理を提供しているのか、時間を豊かにしているのか、特定の人の特定のニーズを満たしているのか。そこが言語化できると、「その解決は別の経路でも届けられる」という発想が生まれてきます。
業種業態の垣根を超えて「問題解決業」として自分の店を見直す、というのが、新業態立ち上げの相談で私が一番伝えたいことです。
この考え方についてもっと詳しく知りたい方には、飲食店の経営コンサルに相談するときに前進しやすい悩みの整理の仕方も参考になります。自分の課題を言語化するヒントとして読んでみてください。
午後の相談で使うチェックポイント:新業態の前に確認する4つの構造
チェックポイント①:収益の入り口は何本ありますか?
店内売上だけで100%を賄っている場合、売上の波がそのまま資金繰りの波になります。法人向け、テイクアウト、物販、デリバリーなど、1本でも別の経路があるかどうかを確認します。
✅ ポイント:まず「今の売上の何%が、どの経路から来ているか」を書き出すところから始めてみてください。数字にすると、依存度が見えます。
チェックポイント②:固定費の中に「やめられる出費」はありますか?
ポータルサイトの掲載費、更新が止まっているツールの維持費、実際に集客に繋がっていない広告費。こうした費用が積み上がっていると、新業態を追加しても全体の利益は増えません。
✅ ポイント:新しいコストをかける前に、今の固定費を1項目ずつ「本当に続けるべきか」見直す。やめることを決めると、新業態へ使えるキャッシュが生まれます。
チェックポイント③:今のお店が「何を解決しているか」を言葉にできますか?
「お好み焼きを出している」ではなく、「地域の法人顧客に質の高い食事を届けている」と捉え直せたとき、新業態の方向性が決まります。自分のお店を「業種」ではなく「機能」で定義し直すことが出発点です。
✅ ポイント:「うちのお客さんが本当に困っていることは何か」を書き出してみると、新業態のヒントが今のお客さんの中にあることがわかります。
チェックポイント④:新収益源に「安定性」はありますか?
千葉のお好み焼き店が法人向け弁当を選んだのは、「朝に注文が確定する」という安定性があったからです。新しい収益源を作るとき、その経路がどれだけ安定しているかを最初に確認することが大切です。
✅ ポイント:季節変動・天候・競合の動向に左右されにくい収益源ほど、資金繰りの安定に直接貢献します。
新業態の相談を受けるときに使うチェックリストを整理したら、今度は飲食店の販促を外部に依頼するときの失敗しない発注の進め方と合わせて読んでみると、収益の土台と情報発信の設計をセットで考えられます。
15時の業務終了前、一日を締めくくる「振り返りの10分」
当オフィスの営業時間は10時から15時まで。この5時間をどう使うかが、コンサルタントとしての質に直結します。
15時になる前の10分は、必ず振り返りの時間にしています。その日の相談で何を伝えられたか、何が伝わっていなかったか。会員さんの事例のどこが今日の相談者さんに刺さったか。ここを言語化しておくことで、翌日のメールマガジンや会報誌に活かせる内容になっていきます。
読者数1万人を超えるメールマガジンで毎日書き続けられているのは、この「現場の相談から生まれた気づき」を届けているからだと思っています。机の上で考えた経営論より、今日誰かが悩んでいたことの方が、多くの方に刺さる。
今日の相談でも、「新業態を作りたい」という言葉の裏に、「今の資金繰りに不安がある」という本音がありました。そこに正直に向き合うことが、収益の土台を作るための最初の一歩です。
「売上はお客さんの購買行動の結果です。でも、収益の土台は、経営者が設計するもの。この2つを混同していると、いくら頑張っても手元にお金が残らない状態が続きます」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所代表)
新業態の立ち上げを考えている飲食店経営者さんに、今日一番伝えたかったことはここです。「何を始めるか」を考える前に、「今の構造の何を変えるか」を先に決める。その舞台裏の設計が、結果として収益の土台になります。
なお、チラシやSNSなどで新業態を告知する準備をするときは、飲食店のチラシ作成で反応が変わる情報整理のステップも参考になります。伝える内容を整理する前に、構造を整理しておくことが先です。
まとめ:新業態の相談で舞台裏を整えることが、利益を残す店になる近道
新業態立ち上げの相談をするとき、多くの経営者さんは「何をやるか」を持ってきます。でも、収益の土台として本当に必要なのは、「今の構造のどこを変えるか」という問いへの答えです。
収益の入り口を複数持つこと、固定費の「やめられる出費」を整理すること、今のお店が本当に解決していることを言語化すること。この3つが舞台裏で決まっていると、新業態は「追加の売上」ではなく「安定した収益の柱」になります。
千葉のお好み焼き店のように、今持っているキッチンと信頼を別の経路につなぐだけで、新しいお賽銭箱ができる。特別な設備も、大きな投資も、必ずしも必要ではありません。
20年以上、全国の飲食店経営者さんと一緒に動いてきた中で、利益が残るようになった店に共通しているのは、収益の土台を丁寧に設計していたことでした。
収益の入り口が1本だけという構造的リスクを感じながら、何から手をつければいいかわからないまま日々が過ぎている、という状況から抜け出したい方に、増益繁盛クラブでは毎月の会報誌とセミナーで全国の実践事例を共有しています。千葉のお好み焼き店のような具体的なケースを自店に置き換えながら、一緒に動ける環境があります。