「経営戦略を立てたい」と思ったとき、多くの飲食店オーナーが最初につまずくのが、「戦略というのは大企業がやるもの」という思い込みです。
実は、中小企業庁の調査によると、経営計画を文書化している中小企業・個人事業主の割合は全体の約3割にとどまるというデータがあります。つまり、7割の個人店・中小飲食店は「明確な戦略なし」で経営しているのが現実です。
でも、そのことを責めたいわけじゃありません。むしろ、「戦略なんて難しそう」と感じてきたのは、これまでの経営論が難解な専門用語に包まれすぎていたからだと思っています。今日お伝えするのは、個人店でも明日から使える「シンプルな経営戦略の考え方」です。
📋 この記事でわかること
- 飲食店の経営戦略を「7段階の購買行動」で考えるとシンプルになる理由
- 個人店が陥りやすい「頑張り方の罠」とその抜け出し方
- 値引きに頼らず、利益が残る戦略設計の具体的な手順
- 実際に売上・利益を伸ばした飲食店の実例
こんな方におすすめ
- ✅ 売上は横ばいなのに「何が問題か」が分からない飲食店オーナー
- ✅ 経営戦略という言葉に難しさを感じ、手が出ていない方
- ✅ 食べログ・ホットペッパー依存を脱却して自力集客の仕組みを作りたい方
- ✅ 値引きクーポン以外で売上を伸ばしたいと感じている方
- ✅ 「長期的に繁盛し続けるお店」を作りたいと考えている経営者

目次
「売上が伸びない」のは、頑張りが足りないからではない
20年間、全国の飲食店・美容室・小売店の経営者を指導してきて、一番多く聞いた言葉があります。
「もっと良い料理を作れば、お客さんは来てくれるはずだ」
この言葉、ものすごくまっとうで、経営者として誠実な姿勢だと思います。でも、だからこそ言わなければならない。売上は「料理の質」だけでは決まらないのです。
売上はお客さんの「購買行動」の結果です。お客さんがあなたのお店を知って、興味を持って、来店を決めて、実際に入って、注文して、お会計して、また来てくれる――この7つの段階のどこかで離脱が起きているから、売上が止まるのです。
多くの飲食店オーナーは「新規客を増やせば売上が上がる」と考えて集客に力を入れますが、実際には入店率が低かったり、1回来たお客さんがリピートしていなかったりすることが原因の場合がほとんどです。
「料理を磨くことは大切。でも同時に、お客さんがどの段階でお店を離れているのかを把握しないと、どれだけ頑張っても空回りになってしまいます。まず『どこで何が起きているか』を見てみましょう」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店グループ総代表)
個人店に必要な経営戦略は「シンプルな7段階の改善」でできている
経営戦略と聞くと、分厚い事業計画書や難解なフレームワークをイメージしてしまいがちです。でも、個人飲食店に必要な経営戦略は、もっとシンプルです。
私が「顧客購買行動7段階モデル」と呼んでいる考え方をお伝えします。お客さんがあなたのお店を選ぶまでのプロセスを7つに分解するものです。
チェックポイント①:「知る」段階——あなたのお店はそもそも認知されているか
どんなに美味しいお店でも、存在を知られていなければお客さんは来ません。Googleビジネスプロフィールは最適化されていますか?近隣の方がスマホで「近くの焼肉」と検索したとき、あなたのお店は上位に表示されていますか?
✅ ポイント:まずGoogleビジネスプロフィールの写真・営業時間・メニュー情報を最新化することから始めましょう。費用ゼロで認知を広げられる最初の一手です。
チェックポイント②:「来店を決める」段階——外観・看板・メニューが入店を後押ししているか
お店の前を通りかかっても「入ってみようか」と思ってもらえなければ意味がありません。外観の照明は明るいですか?看板に「このお店で何が食べられるか」が一目で伝わっていますか?
✅ ポイント:外観は「お客さんを迎え入れる第一声」です。照明を1段階明るくするだけで入店率が上がった事例は少なくありません。
チェックポイント③:「注文する」段階——メニューブックが売上を作っているか
メニューブックはただの「品書き」ではありません。最も売りたいメニューが一番目立つ位置にありますか?メニュー名は「カット」「ハンバーグ」のような作業名ではなく、お客さんが注文することで得られる「ご利益の言葉」になっていますか?
✅ ポイント:メニューブックの1ページ目・最上段は「一番利益になるメニュー」を置きましょう。安いメニューを上に並べると、そればかり売れてしまいます。
✓ ここまでのポイント
- 売上が伸びない原因は「料理の質」だけでなく、購買行動のどこかで離脱が起きているから
- 経営戦略の本質は「7段階のどこを改善するか」を明確にすることにある
- 認知・入店・注文の各段階に、低コストで実行できる改善策が必ず存在する
「値引き」に頼らない経営戦略を設計する3つのステップ
「集客といえばクーポン・値引き」——この発想から抜け出せていない飲食店は、実はとても多いです。でも、値引きは短期的に客数を増やす一方で、粗利を削り、「安さ目当て」のお客さんしか集まらないという悪循環を生みます。
では、値引きに頼らず利益を伸ばすための経営戦略はどう組み立てるか。3つのステップでお伝えします。
利益重視の戦略 STEP 1
「売上」ではなく「利益」を起点に逆算する
まず、「自分が毎月いくらの利益が必要か」を先に決めてください。老後資金・生活費・家族の教育費……必要な金額から逆算して、今月いくらの粗利が必要かを計算します。その粗利を生み出すために、客単価と粗利率をどう設計するかが経営戦略の出発点です。
⚠️ よくある失敗:売上目標だけを設定して、利益の設計を後回しにしてしまうこと。売上が伸びても粗利が残らない構造のまま走り続けると、忙しいのに手元にお金が残らない状態が続きます。
利益重視の戦略 STEP 2
「ご利益の言葉」でメニューを書き直す
値上げしたいけど怖い――そう感じる方に共通しているのは、メニュー名と説明文が「作業名」のままになっていることです。「ハンバーグ」ではなく「炭火で丁寧に焼き上げた肉汁あふれるハンバーグ」、「カット」ではなく「朝のセットが楽になる扱いやすさデザイン」。お客さんが知りたいのは「このメニューを頼んだら自分はどう良くなるか」です。価値が伝われば、価格への抵抗感は驚くほど下がります。
⚠️ よくある失敗:メニュー名の書き直しだけで終わってしまい、メニューブック全体の構成(松竹梅の3段階設計など)を変えないこと。どんな良い名前をつけても、配置と構成が悪ければ売上には繋がりません。
利益重視の戦略 STEP 3
「お賽銭箱を複数持つ」発想で収益源を増やす
店内売上1本だけに依存する構造は、どんな繁盛店でも脆いです。デリバリー・法人向け弁当・物販・サブスクなど、店舗リソースを使って別の収益経路を1つでも加えると、売上の天井が一気に上がります。千葉県のお好み焼き店が製薬会社向けMR弁当(単価2,500〜3,000円)を朝50個受注する安定ルートを構築した事例は、まさにこの「第2のお財布」の好例です。
⚠️ よくある失敗:新しい収益源を追加しようとして、既存の業務が回らなくなること。まずSTEP 1で「やめること」「任せること」を整理してから、新しい経路を加える順番が大切です。
❌ よくある「戦略の立て方」の間違い
- 「とにかく新規客を増やす」ことだけを考えて、既存客のリピート対策を後回しにする
- ホットペッパー・食べログだけに集客を依存し、自前の顧客リストを持っていない
- 目先の売上を追いかけるあまり、値引きとクーポンを繰り返して利益を削り続ける
✅ 個人店でも実践できる「利益が残る戦略」
- 7段階の購買行動を分解して、最も改善インパクトの大きい段階に集中投資する
- メニューの「ご利益の言葉化」と松竹梅設計で、値引きなしに客単価を上げる
- LINEや顧客リストを活用してリピート率を高め、安定した売上の土台を作る
「経営戦略は、大きな目標を先に決めて、そこから逆算するものです。5年後・10年後にどんなお店にいたいか、どんな生活を送りたいか。その絵が先にあれば、今月何をすべきかは自然と見えてきます」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店グループ総代表)
実際にシンプルな戦略転換で業績が変わった飲食店の事例
「理屈は分かるけど、本当に個人店でも効果が出るの?」という疑問はごもっともです。実際にこのメソッドを実践した飲食店の事例をご紹介します。
「ランチメニューをゼロから見直し、地域にないコンセプトの『メイン3つ同時盛りプレート』(2,300〜2,500円)を開発しました。値引きは一切せず、独自の価値で訴求した結果、月商が130万円から450万円に伸びました。やることは難しくなかったですが、考え方が変わったことが一番大きかったです」
和歌山県の飲食店オーナー(増益繁盛クラブメンバー)
「既存メニューの麺の幅を少し広めにしただけで、SNSで話題になり注文が1.5倍になりました。新しい設備投資も必要なく、3ヶ月以内に効果が出たことに正直驚きました」
奈良県のうどん店オーナー(増益繁盛クラブメンバー)
共通しているのは「大きな投資なし」「値引きなし」「3ヶ月以内に効果が出た」という点です。経営戦略というのは、難しい計画書を書くことではなく、「お客さんの行動のどこを、どう変えるか」を決めることに尽きます。
まとめ|個人店の経営戦略は「シンプルな逆算」から始まる
改めて整理しましょう。個人飲食店の経営戦略で最も大切なことは3つです。
1つ目は、売上ではなく利益を起点に逆算すること。今月いくら利益が必要かから考えれば、自ずと客単価・粗利率の設計が決まります。
2つ目は、7段階の購買行動のどこを改善するかを決めること。新規集客より先に「今来てくれているお客さんを逃さない」施策の方が、費用対効果は圧倒的に高いです。
3つ目は、収益源を複数持つこと。店内売上1本に頼らない構造を少しずつ作ることで、どんな環境変化にも揺るがない経営基盤ができます。
「この考え方をもっと体系的に学びたい」「自分のお店に当てはめてみたい」という方には、まず無料メールマガジン「繁盛店になるための12のステップ」から始めてみてください。20年以上・全国の飲食店経営者を指導してきた実践的なノウハウを、全12回にわたってお届けしています。
また、購買行動を軸にした販促改善の具体的な手順を知りたい方には、以下の教材も参考になります。
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