結論から言うと、飲食店の経営改善で最初にすべきことは「何が問題か」を当てずっぽうで探し回ることではなく、現状をチェックリストで診断して、打ち手の優先順位を決めることです。
先日、ある飲食店のオーナーさんからこんな相談をいただきました。「新しいことを始めようと思っているんですが、何から手をつければいいか全然分からなくて……」。話を聞いてみると、料理の腕前は十分。お客さんからの評判も悪くない。でも売上が伸び悩んでいて、「このままでは」という焦りだけが膨らんでいる状態でした。
こういった状況で陥りがちなのが、「飲食店だから、次も飲食で勝負するしかない」という思い込みです。でも実は、その発想が経営改善の視野を狭めている原因だったりします。このあと詳しくお伝えしますね。
📋 この記事でわかること
- 飲食店の経営改善で「まず診断が先」な理由と、チェックリストの使い方
- 「飲食店だから飲食」という枠を外して新規事業を発想する具体的な手順
- 既存のリソース(顧客・立地・ノウハウ)を活かして打ち手を選ぶ考え方
- 診断後に「今日から動ける」第一歩の決め方
こんな方におすすめ
- ✅ 売上が横ばいで、次の一手が思い浮かばない飲食店経営者の方
- ✅ 新しい収益の柱を作りたいが、何から始めればいいか分からない方
- ✅ 「飲食以外」の可能性を探りたいが、業種の枠を超えることに不安がある方
- ✅ 忙しくて経営を俯瞰する時間が取れていないと感じている方
- ✅ 場当たり的な改善を繰り返してきて、体系的に現状を整理したい方

目次
「何から手をつけるか」が分からない本当の理由
経営改善の相談を受けていると、「やることはたくさんある気がするのに、どれから始めればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。思い当たる方は多いんじゃないかと思います。
この「分からない」状態には、ほぼ共通した構造があります。それは、「現状のどこが問題なのか」が可視化されていないまま、解決策を探していること。
病院に行かずに薬を探しているようなもので、診断なしに打ち手を選ぼうとするから迷うんです。まず現状を正確に把握することが、経営改善の第一歩です。
もう一つ根深い問題があります。それが「飲食店だから飲食で稼ぐしかない」という業種の枠への思い込みです。
お客さんはあなたのお店を「飲食店だから」選んでいるわけではありません。「美味しいご飯が食べたい」「大切な人と特別な時間を過ごしたい」「疲れた体を癒したい」――そういった自分の悩みを解決したい、望みを叶えたいという理由で来店しています。この視点に立てると、経営改善と新規事業の発想が一気に広がります。
「収益源が1本だけ」「強みが言語化できていない」というチェックポイントが気になった方は、もう一段深く掘り下げたい部分があると思います。無料小冊子『顧客の購買行動を軸とした販促改善の教科書』では、お客さんの行動を8つのステップに分解して、どの段階に何の打ち手を打てばいいかを具体的に解説しています。メールアドレスだけで、30秒で受け取れます。
飲食店の経営改善チェックリスト|5つの診断ポイント
では実際に、現状を診断するためのチェックポイントを見ていきましょう。以下の5項目を正直に確認してみてください。
チェックポイント①:売上の構造が分解できているか
「売上が低い」とひとくちに言っても、原因は「新規客が少ない」「客単価が低い」「リピートしてもらえない」「回転率が悪い」と複数あります。あなたは今、どの数字が一番弱いか把握できていますか?
✅ ポイント:売上を「客数×客単価×来店頻度」に分解して、どの数字が最も改善余地があるかを特定することが優先です。売上が頭打ちになった時に最初に見直すべき3つの数字を参照すると、分解の具体的なやり方が分かります。
チェックポイント②:収益源が「店内売上」1本だけになっていないか
毎月の売上がすべて「お客さんが来て飲食した代金」だけで構成されている場合、季節波動・悪天候・競合出店など外部環境の変化で一気に売上が落ちるリスクを抱えています。
✅ ポイント:デリバリー・法人向けのお弁当・物販・サブスクなど、店内売上以外の収益経路が1つでも存在するか確認してください。なければ、これが最初の改善テーマになります。
チェックポイント③:お客さんが「何を評価してくれているか」言語化できているか
自分のお店の強みについて、「うちは料理が美味しい」以上の言葉で説明できますか? お客さんが口コミやレビューで書いてくれている言葉と、自分が思う強みが一致していますか?
✅ ポイント:Googleビジネスプロフィールや食べログの口コミを読み返して、お客さんが繰り返し使っている言葉を書き出してみてください。そこに「売れる理由」が隠れています。
チェックポイント④:リピーターへの接触頻度が設計されているか
一度来てくれたお客さんに、次の来店を促す仕組みが動いていますか? LINE公式アカウント・DM・次回予約の声かけなど、「再来店のきっかけ」を意図的に作っていますか?
✅ ポイント:お客さんが来なくなる最大の理由は「嫌い」になったからではなく、「来る理由をきっかけを忘れた」からです。お客さんが来なくなるサインと失客を防ぐ対策も合わせて確認してみてください。
チェックポイント⑤:「業種の枠」に縛られた発想になっていないか
「新しいことを始めたいけど、飲食以外は無理」「うちは小さい店だから新規事業なんて」と思っていませんか? この思い込みが、打ち手の選択肢を大きく狭めています。
✅ ポイント:事業の定義を「何を売るか」から「お客さんのどんな悩みを解決するか」に置き換えると、同じ店舗・スタッフ・立地でまったく新しい収益機会が見えてきます。
✓ ここまでのポイント
- 経営改善は「診断が先・打ち手は後」。現状を可視化せずに解決策を探しても迷うだけ
- 収益源が店内売上1本だけの構造は、外部環境の変化に脆い。複数の収益経路を持つことが安定経営の土台
- 「飲食店だから飲食で稼ぐ」という思い込みが、打ち手の選択肢を狭めている最大の原因
「既存リソースの組み合わせで新規事業を考える」という発想は理解できても、自分のお店に当てはめると「どこから手をつければいいか」で止まる方が多いです。無料小冊子では「取り組む正しい順番」と「なぜ新規集客を最初にやってはいけないのか」を章立てで解説しているので、診断後の打ち手選びに使えます。
新規事業は「ゼロから作る」必要はない――既存要素の組み合わせで考える
「新規事業と聞くと、何か全く新しいものを作らなければいけない気がしますよね。でもカツカレーだってカツとカレーの組み合わせ。消しゴム付き鉛筆だって鉛筆と消しゴムの組み合わせです。すでに手元にあるもので、まだやっていない組み合わせを探すことが、飲食店の新規事業の正しい発想法なんです。」
ハワード・ジョイマン(有限会社繁盛店研究所 代表取締役・中小企業診断士)
チェックポイント⑤で「業種の枠」の話をしましたが、もう少し具体的に掘り下げます。
アメリカン・エキスプレスはもともと運送業の会社でした。そこから保険業、トラベラーズチェック、クレジットカードへと事業を変えてきた。「運送業だから運送しか無理」という発想があったら、今のアメックスは存在していません。
飲食店でも同じことが言えます。「飲食店だから飲食の売上しか作れない」のではなく、すでに持っているリソース――顧客との関係性、立地、スタッフのスキル、厨房設備、日々の食材調達ルート――を別の角度で活かす方法を考えることが、新規事業の正しい発想の起点です。
千葉県のお好み焼き店が、製薬会社向けのお弁当を朝50個受注する安定収益ルートを作った事例があります。もともとの厨房・調理スキル・食材調達の仕組みをそのまま活かしながら、「法人向けお弁当」という新しい組み合わせを作ったわけです。店内の席が空いている午前中の時間帯に別の収益が生まれる、いわば「第2のお財布」の仕組みです。
鳥取県のラーメン店が教えてくれた「強みの言語化」という打ち手
現状診断のチェックポイント③で「お客さんが何を評価しているか言語化できているか」を挙げましたが、これを実際に実行して大きな変化を生んだ事例があります。
「Googleビジネスプロフィールと食べログの口コミをAIで分析したら、お客さんが評価してくれているのはスープの質・懐かしさ・立地の便利さだということが分かりました。それをメニュー欄のキャッチコピーに反映したら、訴求力がまったく変わって。自分では当たり前だと思っていたことが、実はお客さんにとっての一番の魅力だったんだと気づきました。」
鳥取県・ラーメン店オーナー(増益繁盛クラブメンバー)
このラーメン店が行ったのは、設備投資でも値引きでもありません。すでに持っている強みを言葉にして、正しい場所に貼り直しただけです。
口コミにはお客さんが「なぜそのお店を選んだか」「なぜまた来たいと思ったか」が率直に書かれています。これはある意味、経営者が何年かけても作れない生きたマーケティングデータです。この言葉を拾い出して、メニューの説明文・POPのコピー・SNSの投稿に反映するだけで、同じ料理・同じ価格でも「選ばれやすい状態」が作れます。
新規事業の発想においても、この「強みの言語化」は欠かせないプロセスです。自分が何において強いかが明確になってはじめて、その強みを他の文脈で活かす組み合わせが見えてくるからです。
診断後の「打ち手の選び方」と動き出す順番
チェックリストで現状を診断したら、次は「どの打ち手から動くか」を決める必要があります。ここで多くの方が陥りがちなのが、「全部同時にやろうとして何も進まない」パターンです。
打ち手を選ぶ順番には、原則があります。
打ち手を選ぶ STEP 1
まず「やめること」を決める
やることを増やす前に、今やっていることの中で「成果が出ていないもの」「自分でなくてもできるもの」を書き出して手放してください。時間と労力の空きを作ることが、新しい打ち手を実行するための前提条件です。
⚠️ よくある失敗:「今の仕事が忙しいから新しいことができない」と言いながら、実は今の仕事の中に不要な作業が多数含まれているケースがほとんどです。まず棚卸しを先に。
打ち手を選ぶ STEP 2
チェックポイントで「最も弱い1点」を選ぶ
診断した5つのチェックポイントの中で、現状が最も弱い項目を1つ選んでください。全項目を同時に改善しようとするのではなく、1点集中で動くほうが確実に変化が出ます。
⚠️ よくある失敗:「全部問題だから全部やらないと」と広く浅く手をつけ、3ヶ月後に何も変わっていない状態になります。一番弱い1点の改善が、他の数字も連鎖的に動かすことが多いです。
打ち手を選ぶ STEP 3
新規事業は「既存リソース×別の組み合わせ」で発想する
収益源を増やしたい場合は、ゼロベースで考える必要はありません。自店の顧客リスト・立地・厨房・スタッフのスキルのどれかを、今まで使っていなかった文脈で活かす方法を1つだけ考えてください。たとえば「昼間の空き時間に法人向け配達」「自店の定番メニューを物販化」「常連客向けの料理教室」など、既存の延長で着手できる組み合わせは必ずあります。
⚠️ よくある失敗:「うちには特別なものがない」と思い込んで発想を止めてしまうこと。強みの言語化(チェックポイント③)ができていれば、活かせるリソースが見えてきます。
また、店内売上以外の稼ぎ方を整理したこちらの記事も、打ち手の発想に役立ちます。収益源を複数持つ具体的なアイデアが紹介されています。
❌ よくある経営改善の進め方
- 思いついた順に新しいことに手をつける
- 「全部やらなきゃ」と広く浅く動いて消耗する
- 売上が落ちてから慌てて新規事業を考え始める
✅ 診断から始める経営改善の進め方
- チェックリストで現状を可視化し、最も弱い1点を特定する
- 「やめること」を先に決めてから、空いた時間で打ち手を実行する
- 既存リソースの新しい組み合わせで、収益源を段階的に増やしていく
まとめ|診断が先、打ち手は後
飲食店の経営改善で大切なのは、「何か新しいことを始めなければ」という焦りではなく、現状のどこが一番弱いかを正確に把握することから始めるという順番の意識です。
5つのチェックポイントをもう一度振り返ります。
- 売上の構造を分解できているか
- 収益源が1本だけになっていないか
- お客さんが評価している強みを言語化できているか
- リピーターへの接触頻度が設計されているか
- 業種の枠に縛られた発想になっていないか
鳥取県のラーメン店のように、特別な設備投資なしに「強みを言葉にして正しい場所に貼り直す」だけで状況が変わることもあります。新規事業も、カツ+カレー=カツカレーの発想と同じで、すでに持っているリソースの新しい組み合わせから生まれます。
「お客さんは業種業態で選んでいるのではなく、自分の悩みを解決してくれる・望みを叶えてくれるお店を選んでいます。この視点に立てた経営者だけが、同じ店舗・同じスタッフで全く新しい収益機会を見つけられるんです。」
ハワード・ジョイマン(有限会社繁盛店研究所 代表取締役・中小企業診断士)
20年以上にわたり、北海道から沖縄、アメリカ在住の日本人経営者まで、飲食店・美容室・小売店の経営者をサポートしてきた経験から言えることは、「何から手をつけるか分からない」という状態は、診断と順番の整理だけで多くの場合は解消されます。
経営改善の打ち手は、あなたのお店にすでに眠っています。まずは今日、チェックポイントの5項目を紙に書き出してみてください。
チェックリストで現状は見えてきたけれど、「診断の結果を誰かと一緒に整理して、実際に動き出す」という段階で一人では心細いと感じている方へ。増益繁盛クラブでは、全国の飲食店・美容室経営者が毎月ノウハウを共有しながら実践を続けています。孤独な経営判断を一人で抱え込まないための場として、まず入会案内で内容を確認してみてください。