今年に入って、近所の飲食店がまた1軒閉まった――そんな光景に、胸がざわついた経験はありませんか。
料理の腕では負けていない。来てくれるお客さんに感謝もされている。なのに、なぜあのお店は消えてしまったのか。その問いをぼんやりと抱えながら、今日も厨房に立っている。そういう経営者の方が、僕のところに相談にいらっしゃいます。
飲食店が長期にわたって繁盛し続けるために必要なこと、それは「店内売上の1本足打法をやめること」です。店内のお客さんだけを売上の柱にしている限り、天気・景気・流行・競合出店――あらゆる外部変化の影響をダイレクトに受け続けます。この記事では、副業・複数収益源の作り方について、よくある疑問に答える形で解説します。
📋 この記事でわかること
- 飲食店が「第2のお財布」を作るべき理由と設計の考え方
- 今すぐ取り組める副収益源の具体的な選択肢と事例
- 複数収益源を長期繁盛につなげるための仕組みの全体像
- 店内売上以外を増やす際に陥りやすい失敗と対処法
こんな方におすすめ
- ✅ 売上が店内飲食だけに頼っていて、いざというときが不安な方
- ✅ 忙しいのに利益が残らず、収益構造を見直したい方
- ✅ デリバリー・物販・法人向け販売などを検討しているが何から始めるか迷っている方
- ✅ 10年・20年と続く店を作りたいと真剣に考えている方
- ✅ 値引きや広告費を増やさずに売上の天井を上げたい方

目次
飲食店が副収益源を作るべき理由は?
江戸時代の日本の人口は約4,000万人でした。現在は約1億3,000万人。しかしこれから先は、再び減少に転じていきます。お客さんの数そのものが減っていく時代に、店内席のフル稼働だけを目指すビジネスモデルでは、いずれ天井にぶつかります。
コロナ禍はその脆さを一気に可視化しました。時短営業・酒類提供禁止・外出自粛――どれも「店内飲食」という1つの収益経路を封じるだけで、経営が立ち行かなくなった。逆に言えば、収益の入口が複数あれば、1本が細くなっても残りで補える。
僕はこれを「お賽銭箱を複数持つ」という言い方でお伝えしています。神社のお賽銭箱が1つしかなければ、お賽銭を入れる人が減ったとき収入が一気に落ちます。でも複数の箱があれば、1つが空でも残りに入ってくる。飲食店の経営も、まったく同じ発想です。
「『売上が落ちたらどうしよう』という不安の根っこは、収益の入口が1つしかないことへの恐怖です。入口を2つ、3つと増やすだけで、経営者の精神状態が別人のように変わります。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 代表)
飲食店が取り組める「第2のお財布」の具体例は?
「副収益源といっても、何をすればいいか分からない」――これが最もよくいただく声です。選択肢は、実は今の店舗リソースを使った形で複数あります。
チェックポイント①:法人向け・MR弁当の可能性を確認したか
近隣に製薬会社・工場・オフィスビルがあれば、法人向け弁当(MR弁当)は非常に有力な選択肢です。千葉県のお好み焼き店では、製薬会社向けに単価2,500〜3,000円の弁当を朝50個受注する安定収益ルートを構築しました。月に換算すると、それだけで125万〜150万円の売上が毎朝ほぼ確実に入ってくる仕組みです。
✅ ポイント:「うちはお好み焼き屋だから」と業種の枠で考えない。調理設備・スタッフ・立地のリソースが使えるかどうかで判断する。
チェックポイント②:物販・ファン向け商品の設計はできているか
自店の看板メニューに関連した物販(スープの素・タレ・自家製麺・コーヒー豆・漬物など)は、既存顧客への自然な提案です。来店したお客さんが「家でも味わいたい」と感じるものを、持ち帰れる形で設計します。カフェでコーヒーサブスクを始めたことで月商を20%以上伸ばした事例もあります。
✅ ポイント:まず既存のお客さんが「欲しい」と言っているものを聞く。ゼロから商品開発する必要はない。
チェックポイント③:デリバリー・テイクアウトを仕組みとして設計しているか
デリバリーをやっている店は多いですが、「とりあえずUberEatsに登録した」で終わっているケースが大半です。デリバリーを本当の収益源にするには、デリバリー専用の高利益率メニューを設計し、時間帯ごとに受注を平準化する仕組みが必要です。
✅ ポイント:デリバリーは「店内の余り時間を使う副収益」ではなく、独立した収益経路として設計すると安定する。
✓ ここまでのポイント
- 飲食店の収益源が1本だと、環境変化の影響をダイレクトに受ける構造になる
- 法人向け弁当・物販・デリバリーなど、既存リソースを活かした「第2のお財布」の選択肢は複数ある
- 業種の枠ではなく「調理設備・スタッフ・立地」のリソースで判断するのが正しい出発点
「製薬会社向け弁当を朝50個受注する仕組みを作ったことで、毎月の固定収入ができました。店内が混んでいる日もそうでない日も、その分は必ず入ってくる。この安心感が、経営の判断を変えてくれました。」
千葉県・お好み焼き店オーナー(増益繁盛クラブメンバー)
副収益源を増やす際に陥りやすい失敗は?
新しい収益源を作ろうとして、かえって現場が回らなくなる――これが最もよくある失敗です。副収益源の設計で押さえておくべき対比を整理します。
❌ よくある失敗パターン
- 店内が忙しい時間帯にデリバリーや弁当を詰め込もうとして、両方の品質が下がる
- 「面白そう」「流行っているから」という理由で手を出し、自店の顧客層と合わない
- 社長一人が全部抱え込んで、結果的に「忙しくなっただけ」で利益が増えない
✅ うまくいくアプローチ
- まず「店内の空き時間・空きスペース・余剰スタッフ」を棚下ろしして、追加投資ゼロで実現できる収益源から始める
- 既存の顧客(半径10分圏内のリピーター・近隣法人)に向けた商品から設計する
- 社長が担当するのは「仕組みを作る部分」だけにして、運営はスタッフに任せる構造にする
複数収益源を「長期繁盛」につなげるにはどうすればいい?
副収益を作ることは、ゴールではなく手段です。大切なのは、それが「長期繁盛の経営基盤」につながっているかどうか。
長期繁盛店が共通して持っているのは、「事業の定義が業種業態ではない」という感覚です。かつて人力車業が廃れたとき、「移動のお手伝い業」と自分を定義していた人だけが次の乗り物ビジネスに移れた。飲食業も同じで、「焼肉屋」ではなく「家族が特別な時間を過ごせる体験を提供する業」と定義している経営者は、弁当・物販・イベント・料理教室へと自然に事業を拡張できます。
そのうえで、長期繁盛を支える3つの柱があります。
長期繁盛 STEP 1
店内売上以外の収益源を1つ作る
まずは1つ。法人向け弁当でも、物販でも、テイクアウト専用メニューでも構いません。「第2のお財布」が存在するだけで、経営の安定感はまったく変わります。月商の10〜20%を別の入口から得られるようになれば、心理的な余裕が生まれ、次の投資判断が冷静にできるようになります。
⚠️ よくある失敗:1つ目の副収益源をゼロから設計しようとして時間がかかりすぎる。まず既存メニューの「テイクアウト販売」から始めると最速で動けます。
長期繁盛 STEP 2
顧客生涯価値(半径10分ビジネス)を意識する
1人のお客さんが生涯にわたってもたらしてくれる売上を「顧客生涯価値」と呼びます。半径10分圏内のリピーターが、店内飲食・テイクアウト・物販・ギフト購入と複数の接点でお金を使ってくれる構造を作る。これが「半径10分ビジネスの徹底」です。新規集客コストをかけずに、既存顧客から丁寧に売上を積み上げる発想です。
⚠️ よくある失敗:新規集客ばかりに目が向いて、既存顧客との接触頻度が落ちる。LINE公式アカウント・ニュースレター・SNSで定期的につながる仕組みを先に作る。
長期繁盛 STEP 3
接触頻度の仕組みを日常化する
人は、接触回数が増えるほどその相手に好感を持つようになります(心理学の「ザイアンス効果」)。LINE配信・SNS投稿・メールマガジンで定期的にお客さんと接触する仕組みを作れば、広告費をかけなくても「思い出してもらえる店」になります。忙しい日常の中で「そういえばあのお店、行こう」と選ばれるのは、接触回数が多い店です。
⚠️ よくある失敗:SNSを始めても続かない。最初から完璧な投稿を目指さず、「週2回、30秒で書ける今日のメニュー投稿」から習慣化する。
副収益源作りで「何から始めればいいか」分からないときは?
「分かった。でも何から手をつければいいか、結局分からない」――正直、これが一番多い声です。
僕のおすすめは、次の順番で考えることです。
まず今週1週間の「店の空き時間帯」を書き出してください。月曜ランチ前の11時台、閉店後の仕込みが終わった後の時間――その空き時間に、既存の設備とスタッフを使って何ができるか。これが副収益源の出発点です。
次に、今来てくれているお客さんに「何か持ち帰りたいものはありますか」と1週間聞き続けてみてください。そこから出てくる声が、最も売れる物販・テイクアウト商品のヒントになります。
そして3ヶ月後に、店内売上以外の収益が月商の10%を超えることを目標にする。そこに到達したとき、経営の感覚が確実に変わっています。
「副収益源を作ることは、お店を守る保険でもあるし、次の10年を切り開く扉でもある。まず1つ作ってみると、2つ目のアイデアが自然と出てきます。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 代表)
まとめ:「1本足打法」から抜け出すことが、長期繁盛への第一歩
飲食店の副収益源を増やすことは、単なる売上アップの話ではありません。人口減少・環境変化・競合出店、そのどれが来ても揺るがない経営基盤を作ることが本当の目的です。
法人向け弁当・物販・デリバリー・テイクアウト専用メニュー・サブスク――今の店舗リソースで始められる選択肢は、必ずあります。千葉県のお好み焼き店が製薬会社向け弁当で毎朝50個の安定受注を作ったように、業種の枠を超えて「自分の厨房・スタッフ・顧客を使って何ができるか」で考えると、道は開けます。
まずは店内の空き時間帯を1週間書き出すことから、今日始めてみてください。
副収益源の設計から、店内の販促改善・集客の仕組みづくりまで、体系的に学びたい方はこちらをご覧ください。実際に手が動く内容になっています。お気軽にどうぞ。
また、毎月全国の飲食店・美容室経営者と一緒に「売上より利益を重視する経営」を実践していく場として、会員制コンサルティングも運営しています。同じ悩みを持つ仲間と継続的に学びたい方は、ぜひ一度のぞいてみてください。