結論から言うと、飲食店がデリバリーを始めるかどうかの判断は「手数料を差し引いた後に粗利が残るか」という一点に尽きます。それだけ確認すれば、デリバリー導入の是非は自ずと見えてきます。ここではその計算の仕方と、実際に収益源として機能させるための考え方を、できるだけ平易にお伝えしていきます。
ところで少し脱線しますが、私(ハワードジョイマン)は休日になると静岡市清水区の港エリアをぶらぶら歩くのが好きでして。新清水駅から歩いてすぐのところにある事務所を出発して、近所の定食屋さんや鮮魚店を眺めながら、「このお店、デリバリーやったらどうなるかな」などと勝手に試算してしまうわけです。職業病といえば職業病ですが、歩きながら考える時間が一番アイデアの出やすい時間でもあります。
さて、その「歩きながら試算」の中で気づいたことがあります。デリバリーを始めた飲食店の多くが「売上は増えたのに手元に残らない」という状態に陥っているということ。今日はそのカラクリと、正しい導入判断の仕方を順番に見ていきます。
📋 この記事でわかること
- デリバリーで手元にお金が残らなくなる理由(手数料と粗利の構造)
- 導入前に必ずやっておくべき利益率の計算方法
- ウーバーイーツ等への依存リスクと「自前のデリバリー収益源」の考え方
- デリバリーを第2のお財布として機能させた実店舗の事例
こんな方におすすめ
- ✅ デリバリーを始めようか迷っている飲食店の経営者
- ✅ ウーバーイーツに登録しているが利益が出ているか不安な方
- ✅ 店内売上以外の収益源を作りたいと考えている方
- ✅ 「デリバリー=売上が増える」と思い込んでいないか確認したい方
- ✅ 値引きに頼らずに収益を伸ばす方法を知りたい経営者

目次
デリバリーで「忙しいのにお金が残らない」が起きる理由
ウーバーイーツや出前館などのフードデリバリープラットフォームの手数料は、売上に対して30〜35%前後かかるのが一般的です。仮に1,000円の商品を販売した場合、手元に残るのは650〜700円。そこから食材費・梱包資材・スタッフ人件費を引いていくと、粗利がほぼゼロ、あるいはマイナスになるケースも珍しくありません。
問題は、多くの経営者が「売上が増えた」という表面の数字だけを見て、内部の粗利構造を確認しないまま注文をこなし続けてしまうことです。デリバリーは店内営業と違い、席を回転させれば粗利が積み上がる仕組みではありません。1件1件の注文ごとに利益が出ているかを確認しないと、忙しくなるほど損をする構造になります。
❌ よくある失敗パターン
- プラットフォームに登録 → 注文が増える → 「繁盛してる」と錯覚
- 梱包・配達待機・調理オペレーション増加 → 人件費がかさむ
- 月末に計算すると、デリバリーで増えた売上の大半が手数料に消えている
✅ 正しい発想の入口
- 「デリバリー1件あたりの粗利額」を先に計算する
- 既存の店内オペレーションに負荷がかかる場合は、専用メニューで対応する
- プラットフォームに頼らない自前のデリバリー経路も並行して検討する
導入前に必ずやる「1件あたり粗利の計算」
デリバリーを始めるかどうかの判断は、以下の簡単な計算を1度やってみるだけで見えてきます。
チェックポイント1:1件あたりの粗利を計算する
たとえばランチセットを1,200円で販売する場合を例に取ります。
- 販売価格:1,200円
- プラットフォーム手数料(35%):▲420円
- 食材原価(30%):▲360円
- 梱包資材(50円):▲50円
- 1件あたり粗利:370円
この370円で人件費・光熱費・設備減価償却を賄えるかどうかを確認します。
✅ ポイント:もし粗利が100〜150円を下回るようであれば、デリバリー専用の価格設定(店内より10〜20%高め)に変更するか、原価率の低いメニューに絞って提供するかを検討してください。
チェックポイント2:既存オペレーションへの影響を見る
ランチのピーク時間帯に店内とデリバリーの注文が重なると、どちらの品質も下がります。「デリバリーを始めたら店内の回転が落ちた」という話は現場でよく聞きます。
✅ ポイント:デリバリー専用の時間帯(例:アイドルタイムの14〜17時)か、デリバリー専用スタッフが確保できる規模感かを確認してから導入の判断をしてください。
チェックポイント3:プラットフォーム依存になっていないか
ホットペッパーや食べログに集客を依存している状態と同じリスクが、デリバリーにもあります。プラットフォームの規約変更・手数料引き上げ・掲載停止が起きた瞬間に注文がゼロになる構造です。
✅ ポイント:プラットフォームと並行して、LINE公式アカウントやGoogle広告経由の「自前の注文経路」を育てておくことが長期的な安定につながります。
✓ ここまでのポイント
- デリバリーは手数料控除後の粗利で判断する。売上が増えても粗利がゼロなら意味がない
- 店内オペレーションへの影響と専用メニューの価格設計をセットで考える
- プラットフォーム1本依存は、ポータルサイト依存と同じリスクを持つ
「自前のデリバリー収益源」を作るという発想
私がよくお伝えしているのが「お賽銭箱を複数持つ」という考え方です。1つのお賽銭箱(収益源)に全部を依存するのではなく、複数の入口からお金が入ってくる構造を作る。デリバリーを「プラットフォームへの登録」としてではなく、「新しい収益の入口を作ること」として捉え直すと、発想が変わります。
「デリバリーを始めること自体が目的になってしまっている経営者さんをよく見かけます。本来の目的は『お賽銭箱をもう一つ作ること』。その箱に、プラットフォームからの注文だけでなく、法人向けや常連客からの直接注文も入ってくる状態にする——それが理想の形です。」
ハワードジョイマン(有限会社繁盛店研究所 代表取締役・中小企業診断士)
具体的な「自前のデリバリー経路」の例として、法人向けの弁当販売があります。
自前デリバリーの導入 STEP 1
ターゲットを法人(企業・病院・介護施設等)に絞る
近隣の企業・クリニック・介護施設にアプローチし、毎朝決まった数の弁当を受注する形で始めます。単価は2,000〜3,000円に設定できることが多く、プラットフォームを通さないため手数料が発生しません。
⚠️ よくある失敗:最初から大量受注を狙って設備投資してしまうこと。まず5〜10個から試験的に始め、採算が合うことを確認してから規模を拡大してください。
自前デリバリーの導入 STEP 2
LINE公式アカウントで常連客への直接注文を育てる
既存の常連客に「LINEから直接注文できます」という案内をして、プラットフォームを介さない注文経路を作ります。手数料ゼロで同じメニューを提供できるため、客単価が同じでも粗利が大きく変わります。
⚠️ よくある失敗:LINE公式アカウントを作っただけで配信や案内をしないこと。月2〜4回の配信で「今週のデリバリー限定メニュー」を告知するだけで注文率が変わります。
「千葉県のお好み焼き店さんは、製薬会社向けの弁当(単価2,500〜3,000円)を朝50個受注する安定ルートを作られました。プラットフォームを使わず、店内売上とは別の収益の柱が生まれた好例です。『第2のお財布』を作るという感覚が大切で、まずは月10万円でも安定して入る入口を1つ増やすことから始めてほしいと思っています。」
ハワードジョイマン(有限会社繁盛店研究所 代表取締役・中小企業診断士)
デリバリーで成果を出した実店舗の事例
「店内だけの売上に頼っていた頃は、天気が悪い日や連休明けに売上がガクッと落ちるのが怖かった。デリバリー(法人向け弁当)で第2の収益源を作ってからは、月の売上の安定感が全然違います。設備投資はほぼゼロでした。」
千葉県・お好み焼き店経営者(増益繁盛クラブメンバー)
この事例のポイントは「設備投資なし」という点です。既存の厨房・既存のスタッフで、ターゲットを法人に絞り、受注時間をアイドルタイムに設定した。オペレーションに無理がなく、しかも単価が高い——これがデリバリーを「儲かる収益源」にするための基本形です。
また、和歌山県の飲食店では、ランチに「メイン3品同時盛り」プレート(2,300〜2,500円)を開発し、デリバリーでも同じメニューを展開したことで客単価と集客数を同時に伸ばしました。「地域に存在しない独自コンセプト」を作ることで、プラットフォーム上でも埋もれない訴求力が生まれた事例です。
デリバリー導入の最終判断基準をまとめると
ここまでの話を整理すると、デリバリー導入の是非は以下の3つで判断できます。
- 手数料控除後の粗利が成立するか(1件あたり最低200円以上の粗利が目安)
- 店内オペレーションに支障が出ないか(専用時間帯・専用メニューの設計ができるか)
- プラットフォーム1本依存にならない経路を並行して作れるか(法人向け・LINE直注文など)
この3つがクリアできるなら、デリバリーは「お賽銭箱を増やす」優れた手段になります。逆に、手数料を乗せても粗利が薄い・オペレーションが逼迫する・プラットフォーム依存になるだけ、という状況であれば、今すぐ始める必要はありません。
大切なのは「デリバリーをやるべきか」という問いではなく、「自店の利益構造の中でデリバリーをどう位置づけるか」という問いを持つことです。
私がコンサルティングの現場で20年以上・全国の飲食店経営者と向き合ってきた中で感じるのは、「新しい施策を始めること」よりも「今の仕組みの利益構造を整えること」が先だということ。デリバリーも、その延長線上で考えてほしいと思っています。
「デリバリーの利益計算、自分の店でもやってみたい」「第2のお財布を作る具体的なステップを知りたい」という方には、まず店舗経営の利益構造を体系的に学べる教材からはじめることをおすすめしています。
顧客購買行動の分解から複数収益源の設計まで、実践に使えるフレームワークを1冊にまとめました。ぜひ一度ご覧ください。
また、全国の飲食店・美容室・小売店経営者が実践を続ける会員制コンサルティング「増益繁盛クラブ」では、デリバリーの収益設計・法人向け弁当の始め方・LINE活用による自前の注文経路づくりまで、毎月の会報誌とセミナーで継続的に学べます。まずは入会案内ページをのぞいてみてください。お気軽にどうぞ。