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「値上げしたいけど客離れが怖い」経営者が最初にやるべき3つのこと

先日、和歌山県の飲食店経営者のAさんからこんな相談をいただきました。

「ジョイマンさん、仕入れ値も光熱費もどんどん上がっているのに、メニューの値段が上げられないんです。値上げしたら、常連さんが離れていきそうで……」

Aさんは料理に誇りを持っていて、素材も仕込みも妥協しない方でした。それだけに、値上げに踏み切れない自分を「情けない」とすら感じていた。でも、僕はそう思いません。その怖さは、お客さんを大切にしているからこそ出てくる感覚だと思うんです。

ただ、正直に言います。値上げできない本当の理由は「勇気がないから」じゃありません。値上げに見合う「価値の伝え方」ができていないからです。

今日は、Aさんと一緒に試行錯誤しながら辿り着いた「値上げ前にやるべき3つのこと」をお伝えします。

📋 この記事でわかること

  1. なぜ値上げで客離れが起きるのか、本当の原因
  2. 値上げ前に必ずやるべき3つの具体的なアクション
  3. 「作業名メニュー」を「ご利益メニュー」に変える実例
  4. 値引きせずに客単価を上げた全国の繁盛店事例

こんな方におすすめ

  • ✅ 仕入れ値・光熱費の高騰で値上げを検討しているが踏み出せない方
  • ✅ 値上げしたら常連客が離れるのでは、と不安な飲食店・美容室経営者の方
  • ✅ 「うちの料理(技術)には自信があるのに、価格を上げると言えない」と感じている方
  • ✅ 値引きクーポン以外の方法で客単価を上げたい方
  • ✅ メニュー名やメニュー説明の書き方を見直したい経営者の方
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値上げで客が離れる本当の理由は「価格」じゃない

Aさんの店のメニュー表を見せていただいたとき、最初に気になったのはメニュー名でした。

「鶏の唐揚げ 780円」
「本日のお刺身盛り合わせ 1,200円」
「焼き魚定食 900円」

料理名と価格。それだけ。

Aさんに聞くと、鶏の唐揚げは地元の養鶏場から毎朝届く新鮮な鶏を使い、下味に3時間漬け込んでいる。お刺身は地元の漁港から仕入れる朝どれの魚を使っている。焼き魚定食は、ご飯が銅釜で炊いた地元産コシヒカリだという。

「それ、メニューに書いてありますか?」と聞いたら、「いや、書いてないですね……」と苦笑いされていました。

ここが核心です。お客さんは「カット」や「唐揚げ」という作業名・食材名で料理を選んでいるわけではありません。「このメニューを頼んだら、自分はどう良くなるか・どんな体験が得られるか」で選んでいます。

それが伝わっていないまま値上げしても、「え、値段上がったの?」という反応しか生まれません。価格だけで比較される土俵に自分から乗っているのに、そこで値上げするから怖いんです。

「値上げが怖いのは、値上げに見合う価値を伝えられていないから。価値が伝わっていれば、値上げはお客さんへのお知らせにすぎません」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 代表)

やるべき3つのこと【その1】メニュー名を「作業名」から「ご利益の言葉」に変える

Aさんと一緒にまず取り組んだのが、メニュー名の書き換えです。

「鶏の唐揚げ」を「地元養鶏場から毎朝届く新鮮鶏の、3時間漬け込み旨味唐揚げ」に。
「本日のお刺身盛り合わせ」を「地元漁港 朝どれ鮮魚の刺身盛り——今日の港で獲れたものだけ」に変えました。

これを「ご利益の言葉化」と呼んでいます。お客さんが知りたいのは「このメニューを注文すると自分はどう良くなるのか・何が嬉しいのか」です。それを料理名に込める。

❌ 作業名メニュー(よくあるパターン)

  • 「鶏の唐揚げ 780円」——何が特別なのか全く伝わらない
  • 価格だけで他店と比較される
  • 値上げしたとき「高くなった」という印象だけが残る

✅ ご利益メニュー(推奨アプローチ)

  • 「地元養鶏場から毎朝届く新鮮鶏の、3時間漬け込み旨味唐揚げ」——こだわりと体験が伝わる
  • 価値で選ばれるようになる
  • 値上げしても「それだけの素材を使っているなら」と納得感が生まれる

Aさんの店では、このメニュー名の書き換えだけで注文率が変わりました。「唐揚げって書いてあるだけじゃわからなかったけど、そんなこだわりがあるなら食べてみたい」とお客さんが言ってくれるようになったと聞いたとき、率直に嬉しかったです。

やるべき3つのこと【その2】松竹梅の構成で「選ばせる」状態を作る

次にやったのは、メニュー構成の組み替えです。

多くのお店のメニューは「安い順」か「ページ番号順」に並んでいます。でも、これは一番安いものしか売れない構造を自分で作ってしまっています。

Aさんの店でも、コース料理が3種類あるのに一番下に書いてあって、しかもページの隅っこだった。ほとんどのお客さんが気づかずにアラカルトで注文していました。

そこで取り組んだのが「松竹梅の法則」の活用です。

チェックポイント1:メニューの一番目立つ場所に何が書いてあるか

お客さんの目線は「最初に見たもの」を基準に判断します。安いメニューを先に見せると、それが「基準値」になって高いものが頼みにくくなります。

✅ ポイント:一番売りたいメニュー(利益率が高く、こだわりも伝わるもの)を最初のページの目立つ位置に配置する。コース・セットメニューは「上・中・下」の3段階で見せ、真ん中(竹)を注文してもらいやすい価格設計にする。

チェックポイント2:コースやセットメニューの存在が伝わっているか

「実はコースもあるんです」は機会損失の典型です。コースはアラカルトより客単価が上がりやすく、食材ロスも減ります。

✅ ポイント:コース・セットメニューをメニューブックの表紙または最初のページに移動させる。スタッフが「本日はコースもございます」と一言添えるだけで注文率が変わります。

✓ ここまでのポイント

  • 値上げへの怖さの本質は「価値が伝わっていないこと」にある。まず伝え方を変える。
  • メニュー名を「作業名」から「ご利益の言葉」に変えるだけで、同じ料理でも選ばれ方が変わる。
  • 松竹梅の構成で「選ばせる」状態を作ると、客単価は自然に上がる。

「ランチにハンバーグ・ハラミステーキ・エビフライの3種類が同時に盛られたプレートを開発しました。2,300〜2,500円の価格でも『この地域にはここにしかない』と話題になり、月商が130万円から450万円に増えました」

和歌山県の飲食店経営者(増益繁盛クラブメンバー)

この事例で注目してほしいのは、値引きを一切していないことです。むしろ単価を上げながら、集客数も同時に伸ばしています。「地域にここにしかない体験」という価値が伝わったから、お客さんが来たわけです。

やるべき3つのこと【その3】値上げの「前」に価値訴求を徹底する

ここが一番大事なところです。

多くの経営者が「値上げする」→「お客さんに告知する」という順番で考えています。でも、本来の順番は逆です。

値上げ成功の正しいSTEP

値上げ前 STEP 1

こだわりと価値をお客さんに届ける

メニュー名の書き換え・POP・スタッフの一言・SNS投稿で「うちはこんなこだわりでやっています」を日常的に発信する。値上げの告知をする前に、最低1〜2ヶ月はこれを続ける。

⚠️ よくある失敗:こだわりを「当たり前のこと」だと思って発信をサボりがち。お客さんはお店の裏側を知らない。伝えなければ「普通のお店」と思われる。

値上げ前 STEP 2

価格変更を「お知らせ」として丁寧に伝える

値上げを「申し訳ない」トーンで伝えると、お客さんも「なんか残念だな」と感じます。「より良い素材・より良いサービスを続けるための価格改定」として堂々と伝える。常連さんには一言「原材料費の高騰に対応するため、◯月より一部メニューを価格改定いたします。今後ともよろしくお願いします」と添えるだけで印象が変わります。

⚠️ よくある失敗:値上げ告知を「ひっそり」とやる。気づかれないことを期待していると、後で「いつの間に上がったの」という不信感につながる。

値上げ後 STEP 3

価値の発信を止めない

値上げが終わったら発信をやめるお店が多い。でも価値訴求は「仕組み」として続けることで初めて効果を発揮します。LINEやSNS・メニューブックの更新を継続し、接触頻度を保つ。

⚠️ よくある失敗:値上げ後に「値上げした分、しっかり頑張ろう」と現場の質向上だけに注力して発信を忘れる。品質が上がっても伝わらなければ意味がない。

「鳥取のラーメン店さんでは、GoogleとタベログのクチコミをAIで分析したら、お客さんが評価していたのはスープの質と懐かしさと立地の良さでした。その3つをメニューのキャッチコピーに落とし込んだら、新規のお客さんが増えました。自分では気づいていなかった強みが、お客さんの声の中にあったんです」

ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 代表)

「値段」ではなく「価値」で選ばれる店になるために

Aさんのその後を少しお伝えします。

メニュー名の書き換えとコース構成の見直しから始めて、3ヶ月後に価格改定を実施しました。結果として、客単価は上がり、常連さんの多くは「まあ、これだけのものを出してるんだから当然だよね」と言ってくれたそうです。離れたのは数人だったと聞いています。

値引きしない。でも客単価は上げる。これは夢の話じゃなくて、「価値の伝え方」を変えれば実現できることです。

私は静岡市清水区を拠点に、20年以上・全国の飲食店・美容室経営者をサポートしてきました。中小企業診断士(経済産業省登録番号402345)として経営の設計を、そしてコピーライターとして「言葉で価値を伝える」専門家として、値引きに頼らずに繁盛し続ける店作りをご支援しています。

「うちの料理(技術)に自信はある。でも、それがお客さんに伝わっていない気がする」——そう感じている方は、まずメニューの言葉を見直すところから始めてみてください。特別な設備投資も、大きなコストも必要ありません。今日から動けることです。


まとめ:値上げ前にやるべき3つのことを振り返る

今回の内容を整理します。

  • 1. メニュー名を「作業名」から「ご利益の言葉」に変える——お客さんは「何が得られるか」で選んでいる
  • 2. 松竹梅の構成で「選ばせる」状態を作る——メニューの並び順と配置が客単価を決める
  • 3. 値上げの前に価値訴求を徹底する——伝わってから上げるのが値上げ成功の正しい順番

「値上げしたいけど怖い」という感覚は、経営者として真っ当な感覚です。ただ、その怖さを「勇気の問題」で終わらせるのはもったいない。やるべきことをやれば、怖さは自然と薄れていきます。

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  • この記事を書いた人

ハワードジョイマン

利益倍増アドバイザー 中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345) 絵本作家(構想・シナリオ担当) ・有限会社繁盛店研究所 代表取締役 ・株式会社繁盛店研究出版 取締役 ・繁盛店グループ総代表 ・株式会社トクスル 代表取締役 ・株式会社日本中央投資会 代表取締役 1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区) 自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。 大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。 市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。 取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。 お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。 こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。 発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。 会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。 コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。 どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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