「今日も気づいたら厨房に入りっぱなしだった」――そんな一日の終わりに、ため息をついた経験はありませんか?
お客さんが多い日は嬉しい。でも夜の締め作業を終えて帰宅するころには、「明日の仕入れどうしよう」「来月の売上足りるかな」と頭の中がフル回転。経営のことを腰を据えて考える時間なんて、一秒もない。
じつは、この状態こそが「売上が頭打ちになる根本原因」です。社長が現場の作業者になってしまっているお店では、どれだけ料理の腕を磨いても、どれだけ長時間働いても、売上の天井を突き破ることができません。
今回は、静岡市清水区を拠点に20年以上・全国の飲食店・美容室経営者を指導してきた中小企業診断士・ハワードジョイマンが、「自分にしかできない仕事を見極めるワーク」の具体的な手順をお伝えします。
📋 この記事でわかること
- なぜ社長が現場に入り続けると売上が伸び止まるのか
- 「自分にしかできない仕事」と「任せられる仕事」を分ける具体的なワークの手順
- 仕事を手放した先に生まれる「社長本来の仕事」とは何か
- 実際に現場依存を脱した全国の経営者の事例
こんな方におすすめ
- ✅ 現場に入りすぎて経営戦略を考える時間が取れない飲食店オーナーの方
- ✅ 「自分がいないと店が回らない」状態から抜け出したい方
- ✅ スタッフに任せたいが、どこから手をつければよいか分からない方
- ✅ 社長業に集中して売上・利益を本格的に伸ばしたい方
- ✅ 将来の事業承継・多店舗展開を視野に入れている方

目次
「自分でやったほうが早い」は、実は店を止める呪文
多くの飲食店・美容室の経営者と話していて、ほぼ必ずと言っていいほど出てくる言葉があります。
「自分でやったほうが早いんですよ。」
この感覚、気持ちはよくわかります。長年この仕事一筋でやってきた。スタッフに説明する時間があれば、自分でやったほうがよっぽどスムーズ。そう感じる場面は確かにある。
でも、ちょっと待ってください。
あなたが今日、厨房で過ごした3時間。その時間を「新メニューの企画」や「次の季節のチラシ作り」「LINE配信の文章」に使えていたら、来月の売上はどう変わっていたでしょうか。
社長の仕事は、大きく言うと2つだけです。「売上を作ること」と「儲かる仕組みを作ること」。この2つにどれだけ時間を投入できているかで、5年後・10年後の店の姿がまったく変わってきます。
「社長が現場から抜けられないお店は、社長が倒れた瞬間に売上が止まります。それは店の問題ではなく、仕組みがない問題です。仕組みを作るのが社長の本来の仕事なのに、その時間を自ら奪っているんです。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店グループ総代表)
「自分にしかできない仕事」を見極める棚下ろしワーク
では、どうやって「任せる仕事」と「自分が持つ仕事」を分けるのか。具体的な手順をお伝えします。
棚下ろしワーク STEP 1
1週間の行動を15分単位で書き出す
まず1週間分の自分の行動を、15分ごとに紙に書き出してみてください。「9:00〜9:15 仕込み」「9:15〜9:30 スタッフへの朝礼」「9:30〜10:00 発注作業」——このように、実際に何をしているかを可視化します。頭の中だけで考えると「そんなに現場に入っていない」と感じがちですが、書き出すと驚くほど作業者の時間が多いことに気づきます。
⚠️ よくある失敗:「大体こんな感じ」で済ませてしまい、リアルな現実が見えないまま終わる。必ず実際の1週間をそのまま書き出すこと。
棚下ろしワーク STEP 2
仕事を3種類に分類する
書き出した仕事を、次の3つに振り分けます。
①「自分にしかできない仕事」(例:看板メニューの最終レシピ確定、大口顧客との関係構築、経営の意思決定)
②「他の人に任せられる仕事」(例:発注作業、掃除、定番メニューの調理、SNS投稿の下書き)
③「やめられる仕事」(効果が薄い慣習的な作業、本当は必要のない確認作業)
⚠️ よくある失敗:「これも自分じゃないとダメ」と①に入れすぎてしまうこと。判断基準は「マニュアルがあれば他の人でもできるか」。マニュアルさえ作れば任せられるものは②に入れる。
棚下ろしワーク STEP 3
「やめること」を先に決める
多くの経営者は「何かを追加しよう」と考えます。でも順番が逆です。先に「やめること」を決めてから、空いた時間に「社長本来の仕事」を入れる。③に分類した「やめられる仕事」を、まず今週から手放してください。
⚠️ よくある失敗:「いつかやめよう」と先送りにすること。やめる日付を決めて、カレンダーに書き込む。
棚下ろしワーク STEP 4
「任せる仕事」を段階的に移譲する
②に分類した仕事を、スタッフに順番に引き渡していきます。いきなり全部は難しいので、週に1つずつでかまいません。引き渡す際は「何をどうすればよいか」を一度だけ丁寧に見せて、あとは任せる。「お客さんの購買行動のどの段階を誰が担当するか」という視点で役割を割り振ると、スタッフが自分の仕事の意味を理解しやすくなります。
⚠️ よくある失敗:スタッフが少し失敗すると、すぐに自分で引き取ってしまう。スタッフが育つには、失敗から学ぶ経験も必要。社長が抱え込みすぎると、スタッフはいつまでも育たない。
✓ ここまでのポイント
- 「自分でやったほうが早い」は短期的には正しいが、長期的には店の成長を止める思考パターン
- 1週間の行動を15分単位で書き出し、仕事を3種類に分類するのが棚下ろしワークの核心
- やることを増やす前に「やめること」を先に決めることで、社長本来の仕事への時間が生まれる
「任せる仕事」を手放したあと、社長は何をするのか
現場の作業を手放した社長が本来やるべき「①の仕事」は何か。具体的に言うと、次のようなことです。
・名物メニューを1つ作る(「この店といえばこれ」と脳内に刻まれるもの)
・メニューブックを見直して、一番売りたいメニューを一番目立つ場所に配置する
・LINE公式アカウントで既存客に月2〜3回メッセージを送る仕組みを作る
・お客さんが帰る際に「再来店券」を渡す仕組みを導入する
・法人向け弁当やデリバリーなど、店内売上以外の「第2のお財布」を設計する
どれも「料理を作ること」ではありません。でもこれらの仕事が、売上を大きく動かします。
私がよく使う表現があります。「お賽銭箱を複数持つ」という考え方です。店内売上という1つのお賽銭箱だけに頼るのではなく、デリバリー・物販・法人向けといった複数の入口を作る。社長がこういった仕組みの設計に時間を使えるようになることが、経営者として最も価値の高い仕事です。
比較してみましょう。
❌ 現場依存型の社長の1日
- 仕込みから仕上げまですべて自分で担当
- スタッフへの指示は都度口頭で、マニュアルなし
- 閉店後は疲弊して帰宅、経営を考える余裕がない
- 自分が休むと店が回らないプレッシャーが常にある
✅ 仕組み設計型の社長の1日
- 午前中はスタッフに任せ、社長は新メニュー開発と販促の企画に集中
- AIを活用してLINE配信文・広告コピーを30分で仕上げる
- 週1回スタッフとミーティングし、購買行動7段階のどの部分を改善するか議論する
- 自分が不在でも売上が安定し、時間と精神的余裕が生まれる
「私が全国の会員さんに繰り返しお伝えしていることがあります。社長の仕事は『売上を作ること』と『儲かる仕組みを作ること』の2つだけ。それ以外はできる限り任せていく。この切り替えができた方から、業績が大きく動き始めます。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店グループ総代表)
現場依存を脱したお店に起きた変化:全国の実例
「社長がやらなくていい仕事を手放したことで、法人向けの弁当ルートを開拓する時間が生まれました。今では製薬会社向けに朝50個の弁当を受注する安定ルートができ、店内売上とは別の収益の柱が立ちました。」
千葉県のお好み焼き店経営者(増益繁盛クラブメンバー)
この千葉のお好み焼き店の事例は、まさに「社長本来の仕事」に時間を使った結果です。単価2,500〜3,000円の弁当を毎朝50個。店内の混雑に左右されない安定収益が生まれた背景には、社長が現場から半歩引いて「新しい収益源の設計」に集中できる時間を作ったことがあります。
また、和歌山県の飲食店では、月商130万円から450万円への伸長を実現しました。ランチに「ハンバーグ・ハラミステーキ・エビフライの3つ同時盛り」プレートを開発し、地域に存在しない独自コンセプトで客単価と集客数を同時に引き上げています。このメニュー開発も、社長が厨房から少し頭を出して「どんな価値をお客さんに届けるか」を考える時間があったからこそ生まれたアイデアです。
「自分にしかできない仕事」診断チェックリスト
あなたのお店の現状を確認してみましょう。
チェックポイント①:自分が休んだとき、売上はどうなりますか?
「自分がいない日は売上が3割落ちる」という状態は、売上が社長個人の体力に依存している証拠です。
✅ ポイント:スタッフが「購買行動のどの段階を担うか」を明確にし、各段階のマニュアルを1枚でも作ることから始める。
チェックポイント②:1日のうち「経営の仕事」に使った時間は何分ですか?
多くの経営者が「気づいたらゼロ分だった」と答えます。経営の仕事とは、販促設計・メニュー改善・顧客リストの整備・スタッフ教育の仕組みづくりなどです。
✅ ポイント:まず週に1時間だけ「誰も自分に話しかけられない時間」をカレンダーに確保する。その時間に棚下ろしワークを行う。
チェックポイント③:スタッフに「なぜこの仕事をするのか」を説明できていますか?
「とりあえずやっておいて」という指示では、スタッフは作業者のままです。「この行動がお客さんの再来店につながる」という意味まで伝わっているかどうかが、スタッフの育ち方を大きく左右します。
✅ ポイント:「お客さんの購買行動7段階(知る→興味→来店→入店→注文→会計→再来店)」のどの部分をスタッフが担っているか、一緒に確認する場を月1回設ける。
チェックポイント④:5年後のお店のイメージを言語化できていますか?
「なんとなく続けていきたい」では、仕組み化の方向性が定まりません。「どんなお客さんに」「どんな価値を」「どんな体制で」届けるのかが言語化されていることが、社長業に集中するための土台です。
✅ ポイント:ビジョンボードを一枚の紙に書き出す。「理想のお客さん像」「理想の店の姿」「理想の自分の1日」を絵や言葉で描くだけでよい。
まとめ:「任せる勇気」が、お店の天井を突き破る
「自分にしかできない仕事を見極めるワーク」は、難しいことではありません。紙とペンがあれば今日からできます。
大事なのは、手順よりも「決断」です。任せることへの不安は誰でも持っています。でも、現場依存のまま走り続けた先には、体力の限界か、売上の天井か、そのどちらかしかありません。
全国の増益繁盛クラブの会員さんを見ていると、この棚下ろしワークをやった方から確実に変わっていきます。最初は小さな「任せる」の積み重ねが、やがて社長の時間を生み、その時間が新しい収益源を生み、お店の可能性が大きく広がっていく。
「もっと早くやればよかった」という声を、私は何度も聞いてきました。その一歩を、今日から踏み出してほしいと思っています。
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現場から半歩引いて、社長本来の仕事に集中したい方は、ぜひ以下からお気軽にご覧ください。
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