10月に入り、ようやく涼しさを感じられる季節になりましたね。
秋は「食欲の秋」というだけあって、飲食店にとってはかき入れ時。実際、この時期になると「客数は増えているのに、なぜか利益が残らない」という声をよく耳にします。
忙しくなっているのに手元のお金は変わらない――その原因のひとつが、「価格設定の問題」です。
「うちは地域柄、高い値段はつけられない」「値上げしたら客が離れる」――そう思っているあなたに、今日は少し違う角度からお話しさせてください。
実は、高くても売れるお店には共通した「値付けのロジック」があります。それは特別な立地でも、ブランド力でもなく、価格の設定方法と、伝え方の設計にあります。
📋 この記事でわかること
- なぜ「安くしないと売れない」という思い込みが生まれるのか
- 高くても選ばれる店の値付けに共通するロジック
- メニュー名・価格帯の設計で客単価を上げる具体的な方法
- 値上げしても客離れしない「価値訴求」の進め方
こんな方におすすめ
- ✅ 客単価を上げたいが、値上げすると客が減りそうで怖い方
- ✅ 値引きクーポンに頼らない集客の仕組みを作りたい方
- ✅ 「安さで選ばれる店」から「価値で選ばれる店」に変わりたい方
- ✅ 利益率が低く、忙しいのに手元にお金が残らないと感じている方
- ✅ プレミアムメニューや上位価格帯の作り方を知りたい飲食店・美容室経営者の方

目次
「高いと売れない」は思い込みかもしれない
少し想像してみてください。
コンビニのコーヒーは100円台で買えます。でも、スターバックスは600〜700円する。それでも毎日行列ができる。なぜでしょう?
答えは単純で、「価格に見合う体験・価値が見えているから」です。スターバックスを選ぶ人は、コーヒーだけを買っているわけじゃない。あの空間、あのカップ、あのちょっとした非日常感を込みで買っている。
では、お客さんが飲食店や美容室を選ぶとき、何を基準にしているのでしょうか。
多くの経営者は「価格」だと思っています。でも実際には、「この値段を払う価値があるかどうか」という判断をしています。価格そのものより、価格に対する「納得感」で選んでいるんです。
だとすれば、問題は「価格が高いこと」ではなく、「その価値がお客さんに伝わっていないこと」にあります。
「値上げを怖がる経営者の多くは、自分の商品・サービスの価値を、まだお客さんの言葉で語れていない。価格に納得してもらうのは値引きじゃなく、価値の言語化です。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 代表取締役)
高くても売れる店の値付けに共通する3つの法則
私はこれまで20年以上、全国の飲食店・美容室・小売店の経営者をサポートしてきました。その中で気づいたのは、高くても繁盛している店には、価格設定に共通したロジックがあるということです。
チェックポイント①:メニュー名は「作業名」になっていないか
たとえば「ハンバーグ」というメニュー名。これは料理の名前であり、いわば「作業の結果」です。お客さんが知りたいのは名前ではなく、「このメニューを頼んだら、自分にどんないいことがあるのか」という体験・便益です。
「ハンバーグ」→「溶岩プレートで仕上げた、肉汁が止まらない炙りハンバーグ」
同じ料理でも、後者の方が頭の中にシーンが浮かびます。口の中に唾液が出る感覚、わかりますか? これが「ご利益の言葉」の力です。
✅ ポイント:メニュー名に「どう美味しいか」「どんな体験が得られるか」を一言加えるだけで、同じ価格でも注文率が上がります。値上げ前に、まずメニュー名の見直しから始めてください。
チェックポイント②:価格帯は「1種類」だけになっていないか
人間の心理として、選択肢が「1つだけ」しかないと、頼むか頼まないかの二択になります。でも「3種類」あると、どれにするかの選択になる。
これが「松竹梅の法則」です。
1,500円のランチ1種類だけを出していたお店が、1,200円・1,500円・2,000円の3ラインを作ったとき、多くの場合は真ん中か上が売れます。つまり、客単価が自然に上がるんです。
高い価格帯を「強引に押しつける」必要はありません。選択肢を用意するだけで、お客さんが自分から上位を選んでくれる設計になります。
✅ ポイント:現在のメインメニューを「竹」とし、そこから「松(上位版)」と「梅(入門版)」を設計してみてください。「松」の存在が、「竹」の価値を相対的に際立たせます。
チェックポイント③:「一番売りたいメニュー」がメニューブックの一番上にあるか
これは見落としがちなポイントです。メニューを「安い順に並べる」と、お客さんの目は自然に安いものに向かいます。結果、一番安いメニューばかりが出て、客単価が上がらない。
高くても売れるお店は、「一番見てほしいメニュー」を一番目立つ場所に置いています。
✅ ポイント:メニューブックの左上・一番上には、利益率が高く、かつお店のコンセプトを体現する「名物メニュー」を置く。安いメニューを先頭に出すことは、自分で客単価の上限を設定しているのと同じです。
✓ ここまでのポイント
- 値上げへの抵抗感は「価値の伝え方」の問題。価格より「納得感」が購買を決める
- メニュー名を「作業名」から「ご利益の言葉」に変えるだけで注文率が変わる
- 「松竹梅の3段構成」で、お客さんが自分から上位メニューを選ぶ設計ができる
実際に値上げして、客数も増えた事例
「理屈はわかるけど、本当に高くしても大丈夫なの?」という疑問、当然だと思います。そこで実際の事例をお伝えします。
「ランチに2,300〜2,500円のプレートを出すなんて、最初は正直怖かったです。でも、ハンバーグ・ハラミステーキ・エビフライが同時に乗ったプレートは、地域のどこにもなかった。SNSで写真が拡散して、逆に客数が増えました。値段が高いから来ないんじゃなく、見たことのないものだから来てくれるんだと気づきました。」
和歌山県・飲食店経営者(月商130万円→450万円へ)
このお店が実践したのは、「地域に存在しない独自コンセプト」+「価値に見合った価格設定」の組み合わせです。
値上げで客が離れるのは、「値上げする前と後で、何も変わっていない」から。価値が変わらずに価格だけ上がれば、離れるのは当然です。逆に言えば、「価値が見えれば、価格を上げても客は離れない」し、むしろ新しい客層が来てくれることもある。
プレミアム価格を支える「価値の言語化」の進め方
では具体的に、どう進めればいいか。ステップに沿って見ていきましょう。
価格設定 STEP 1
自店の「当たり前」を書き出す
経営者自身が「当然のこと」だと思っているこだわりを、すべて紙に書き出します。食材の産地・調理時間・仕込みの手間・器のこだわり・サービスの細部――あなたが「特別じゃない」と思っていることが、お客さんには十分に「特別」なことである場合がほとんどです。
⚠️ よくある失敗:「こんなこと当たり前だから書かなくていい」と省いてしまう。自分の常識と、お客さんの常識は違います。全部書き出すことから始めてください。
価格設定 STEP 2
「お客さんがどう変わるか」に言い換える
書き出したこだわりを、「だからお客さんにとってどんないいことがあるか」という視点で言い換えます。
例:「10時間かけてとった出汁」→「一口飲んだ瞬間に、体の緊張がほぐれるような深みのある出汁」
これがメニュー説明・POPのコピー・SNS投稿の言葉になります。
⚠️ よくある失敗:「作り手目線」のままで終わる。「素材にこだわっています」は経営者の言葉。「疲れた体が喜ぶ旨味」はお客さんの言葉。後者の言葉で語ってください。
価格設定 STEP 3
上位メニューを1品だけ作る
いきなり全メニューの価格を見直すのではなく、まず1品だけ「プレミアム版」を作ります。既存メニューに手間・体験・演出を足した「特別感のある版」です。これを「松」として提示することで、既存の「竹」メニューの価値が相対的に上がります。
⚠️ よくある失敗:プレミアムメニューを作っても、メニューブックの目立たない場所に置いてしまう。せっかく作った上位メニューは、必ず最も目立つ場所に置くこと。
❌ よくある値付けパターン
- 周囲の競合店と同じ価格帯に合わせる(価格競争の泥沼へ)
- 「安ければ客が来る」前提で低価格を維持する(利益が残らない)
- コスト積み上げで価格を決め、価値を伝えずに値上げする(客離れが起きる)
✅ 高くても売れる店の値付け
- お客さんが得られる「体験・変化・便益」から価格を逆算する
- 松竹梅の3段階で、お客さんに「選ばせる」設計にする
- 値上げ前に「価値の言語化」を徹底し、伝わってから価格を上げる
「値上げは勇気がいるように見えて、実は一番勇気がいるのは『自分の店の価値を信じること』だと思っています。価値を信じて言葉にして伝えたとき、はじめてプレミアム価格は機能します。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 代表取締役)
「売上より利益」の視点で価格を設計する
最後に、少し大きな視点でお話しします。
多くの経営者は「売上を増やすこと」に集中します。でも、売上が増えても手元に残るお金が増えなければ意味がない。
プレミアム価格の本当の目的は、「利益率を高めること」です。
たとえば月商300万円のお店が、客単価を10%上げる(増客なし)だけで、粗利は大きく変わります。値引きクーポンで客数を倍にするより、客単価を1割上げる方が、はるかに利益への貢献度が高い場合がほとんどです。
私の会員の中には、月商300万円から2億5,000万円まで業績を伸ばした飲食店経営者もいます。その根底にあるのは「安売りで客数を稼ぐ」発想ではなく、「価値で選ばれる店を作る」という一貫した姿勢です。
値引きをしない。クーポンに頼らない。でも、お客さんに喜んでもらいながら、利益もしっかり残す。その仕組みを作ることが、私がお伝えしてきた「増益繁盛メソッド」の核心です。
まとめ:高くても売れる店は「伝え方」を設計している
今回お伝えしたことを整理します。
- 「高いと売れない」は、価値が伝わっていないことへの誤解
- メニュー名を「作業名」から「ご利益の言葉」に変える
- 松竹梅の3段階で、お客さんに自分から上位を選ばせる設計をする
- 値上げの前に「価値の言語化」を先に行う
- プレミアム価格の目的は「利益率を高めること」
どれも、今日から手をつけられることばかりです。特別な設備投資もいらないし、難しいマーケティング用語も必要ありません。
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