先日、関東地方で和食店を営む50代の経営者の方から、こんな相談をいただきました。
「今年のクリスマスと忘年会、早めに動こうと思っているんです。でも毎年、私が全部段取りして、私が接客して…気づいたら体がボロボロで。来年は息子に引き継ごうと思っているのに、どこをどう教えればいいかまったくわからなくて」
この言葉、刺さりました。
クリスマスと忘年会の商戦準備を「10月から始める」という意識は正しい。でもそれ以上に大事なのは、その準備を「社長一人が頭の中でやる」のをやめることだと、20年間この仕事をしていて確信しています。
今回はクリスマス・忘年会商戦を10月からどう仕込むか、その手順をお伝えします。ただし、単なる「集客テク」ではなく、その手順を通じて事業を社長個人の腕から仕組みへ転換することを一緒に考えていきます。
📋 この記事でわかること
- クリスマス・忘年会商戦を10月から仕込む理由と全体像
- 「社長の頭の中」を仕組みに落とし込む具体的なステップ
- 後継者や既存スタッフが動ける集客・接客の体制の作り方
- 属人依存から脱した飲食店が実際に上げた成果のリアル
こんな方におすすめ
- ✅ クリスマス・忘年会の集客を今年こそ体系的に動かしたい飲食店経営者の方
- ✅ 毎年「社長の気合い」で乗り越えているが、体力の限界を感じ始めている方
- ✅ 後継者や子どもに店を引き継がせたいが、何から教えればいいかわからない方
- ✅ スタッフが自分なしでは動けない構造になっていると薄々気づいている方
- ✅ 忘年会シーズンに売上は立つのに、利益がなぜか手元に残らない方

目次
なぜ「10月仕込み」なのか——商戦の勝敗は準備期間で決まる
忘年会・クリスマスの予約が動き始めるのは、一般的に11月の上旬〜中旬です。幹事役の会社員が「そろそろ忘年会の場所を押さえないと」と動き出すのが、おおよそ10月後半から。つまり10月の前半にはすでに受け皿が整っていないと、最初の予約波に乗り遅れるわけです。
ところが多くの飲食店が「11月に入ってからチラシ作ればいいか」と動き出し、気づけば人気店は予約で埋まっていて、残席が少ない状態から集客を始めることになる。これでは焦りが生まれるだけです。
では10月の前半までに何を整えるのか。整理すると大きく3つです。
- ①プランの設計と価格の決定(何コース・何人〜・何円)
- ②告知ツールの準備(チラシ・LINE・Googleビジネスプロフィール・予約ページ)
- ③受付・当日オペレーションの仕組み化(誰が電話を取り、何を案内し、どう管理するか)
この③が、後継者問題・属人依存と直結しています。①と②は「作る」ことができます。でも③は「人が動ける体制」を作ることであり、ここを社長一人の頭の中に置いておくと、毎年同じ消耗が繰り返されます。
もう少し具体的に手順に落とし込みましょう。
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STEP形式で見る——10月前半までの仕込みロードマップ
クリスマス・忘年会商戦 STEP 1
プラン設計と「松竹梅」の料金構成を決める
まず宴会プランを1種類だけ作るのをやめることです。「5,000円コース一択」ではなく、松(8,000円・個室・飲み放題120分)・竹(6,000円・スタンダード・飲み放題90分)・梅(4,500円・立食風・飲み放題なし)のように3段階の選択肢を作る。これが「松竹梅の法則」と呼ばれる設計で、結果として中間価格帯が最も売れる構造を作り出します。
重要なのは、このプラン設計を社長一人で決めてしまわないこと。後継者やナンバー2のスタッフと一緒に作業することで、「なぜこの価格にしたか」「なぜこのメニュー構成にしたか」が自然と共有されます。
⚠️ よくある失敗:「自分が考えた方が早い」と社長が一人で決めてしまうこと。口頭で伝えるだけでは、来年の担当者が再現できません。
クリスマス・忘年会商戦 STEP 2
顧客リストを引っ張り出し、過去の宴会客を整理する
宴会予約の履歴は、店の最大の資産です。昨年・一昨年に宴会を利用してくれた企業・グループのリストを作り、「今年もご利用いただけますか」というLINE配信やDMを10月上旬に送る。これは新規集客とは別の、再来店促進の動きです。
新規ばかりに力を注ぐより、一度来てくれた人への再アプローチの方が、労力対効果は圧倒的に高い。これが「知る→興味→来店→入店→注文→会計→再来店」という購買行動の7段階を意識した考え方で、最初の一手は「再来店」の動線を整えることです。
そしてこのリストが存在して初めて、後継者に引き継げる。「お客さんは全部俺が覚えている」では、社長が倒れた瞬間にリストごと消えます。
⚠️ よくある失敗:予約管理を「電話のメモ」や「社長の記憶」だけに頼っていること。スプレッドシートか、Googleフォーム経由の管理に移行することを推奨します。
クリスマス・忘年会商戦 STEP 3
電話・LINE・WEB予約の受付フローを文字に落とす
宴会の問い合わせが来たとき、スタッフは何を聞いて、何を案内して、どこに記録するのか。これを1枚のフローチャートにまとめて厨房の壁に貼る。社長がいなくてもアルバイトスタッフが対応できる状態を作るのが目標です。
「社長が電話に出ないと予約が取れない店」は、実は大きな機会損失をしています。社長が不在の昼過ぎに問い合わせが来て、折り返しの間に別の店に流れてしまった、という話はよく聞きます。
フローの中には、よくある質問への回答例(駐車場の有無、キャンセルポリシー、アレルギー対応)も入れておく。これが「オペレーションのマニュアル化」の最初の一歩です。
⚠️ よくある失敗:「その場で臨機応変に対応すればいい」という考え方のまま進めること。属人的な対応は、サービスの品質をバラつかせ、後継者が学ぶ対象を失わせます。
クリスマス・忘年会商戦 STEP 4
告知ツールを整え、10月上旬に第一弾を打つ
プランが決まり、受付体制が整ったら、10月上旬に告知の第一弾を打ちます。LINE公式アカウントへの一斉配信、Googleビジネスプロフィールへの投稿、店頭POPの設置、を同時に動かす。
忘年会・新年会の集客準備にやるべきことの全体像については別の記事でも詳しく解説していますが、ここで大切なのは「告知する人」を社長に固定しないことです。LINE配信の文章を社長が考えて、スタッフが配信を押す。あるいは文章のひな型を作っておいて、来年以降は後継者が発信できるようにしておく。
告知の仕組みが「属人的」であれば、来年以降も社長にしかできません。逆に「ひな型+送信フロー」がセットになっていれば、後継者でも動かせます。
⚠️ よくある失敗:SNSやLINE配信を「センスがある人がやるもの」と思い込んで、社長だけが発信し続けること。
✓ ここまでのポイント
- 10月前半に「プラン設計・顧客リスト整理・受付フロー・告知」の4つを整えることが、商戦の準備の核心。
- 各ステップを「社長一人でやる」のではなく「スタッフや後継者と一緒に作り、記録に残す」ことが後継者問題の解決に直結する。
- 顧客リストと受付フローが言語化されていれば、社長がいなくても宴会商戦は動かせる体制になる。
プランを松竹梅で設計しても、顧客リストを整えても、「誰がどの順番で動くか」の全体像が自分の頭にしかないと、仕組みにはなりません。無料小冊子には「新規集客より先にやるべきこと」と「再来店導線の作り方」が章ごとに整理されています。巻末の自店診断ワークシートで、今の自店のどこが弱いかをその場で確認できます。
「仕組みを持つ店」と「持たない店」の決定的な差
毎年の忘年会商戦を通じて感じるのは、繁盛店が繁盛店である理由の大半は「料理の質」ではないということです。もちろん質は大前提ですが、それが5年・10年と続く理由は「仕組みが回っているから」に他なりません。
実際に美容室の事例ですが、こんな声があります。
「自分の稼働を3割削減できたのに、客単価は11,000円から14,000円に上がりました。体力の限界への不安から解放されたのが一番大きかったです」
高単価サロン(女性・40代)
業種は違いますが、この方が言っている「自分の稼働を3割削減できた」というのは、仕組みによって売上を生み出せる体制ができたということです。飲食店に置き換えると、「社長がいなくてもクリスマス・忘年会の予約が入り、当日のオペレーションが回る」状態がそれにあたります。
仕組みを持つ店と持たない店の差を整理するとこうなります。
❌ 仕組みを持たない店(よくあるパターン)
- プランの内容・価格は「社長の感覚」で毎年変わる
- 過去の宴会客の履歴は社長の記憶か手書きメモ
- 電話対応は社長しかできないため、不在時に逃げる
- 告知のタイミングや内容は毎年「思い立ったとき」
✅ 仕組みを持つ店(推奨アプローチ)
- プランは松竹梅で設計され、根拠が記録されている
- 顧客リストが一元管理され、再来店アプローチが自動化できる
- 受付フローが文書化され、アルバイトでも対応できる
- 告知のひな型と配信スケジュールが整備されていて、後継者でも動かせる
後継者に「継ぎたい」と思わせる店は、後者です。仕組みがある店は「学べる」「再現できる」「伸ばせる」という実感を持てます。逆に「すべては親父の経験と勘」という店は、後継者にとって「俺には無理だ」という壁にしか見えません。
「後継者に引き継げない一番の理由は、事業が社長の頭の中にしかないからです。仕組みは紙に書けば渡せる。でも勘や人柄は渡せない。だから仕組みを紙に書く習慣こそが、最大の後継者育成策だと思っています」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・有限会社繁盛店研究所 代表取締役)
クリスマス商戦を「第2のお財布」にする発想
もう一点、宴会商戦の使い方として提案したいのが、店内売上以外の収益経路を合わせて仕込むという視点です。
たとえば、クリスマスシーズンに合わせてオードブルや持ち帰りプランを作る。忘年会の二次会向けに近隣のバーやカラオケ店と提携してパッケージ商品を作る。あるいは法人向けのお節や年末ギフトセットをメニューに加える。これが「お賽銭箱を複数持つ」という考え方で、一つの収益経路に全依存しない店の作り方です。
店内の宴会だけで勝負すると、席数の上限・スタッフの上限が売上の天井になります。でも「宴会+テイクアウトオードブル+法人向け年末ギフト」という3本柱があれば、社長が店に張り付かなくても売上が立つ時間帯・経路が生まれます。
これは飲食店が二次会集客を宴会と一緒に伸ばすための仕組み作りとも深く関わっていて、「宴会を取り込んだ後に何を提供できるか」まで設計しておくと、客単価と顧客生涯価値の両方が上がります。
この発想で大切なのは、各収益経路にオペレーションの担当者を決めることです。宴会対応は後継者候補の長男、テイクアウト対応はパートのAさん、というように役割が分かれていれば、自然と「社長がいなくても動く」組織になっていきます。
まとめ——10月の仕込みは「今年の商戦」と「事業の未来」を同時に作る
クリスマス・忘年会商戦を10月から仕込む本当の価値は、売上を最大化することだけではありません。その準備プロセスを通じて、社長の頭の中を仕組みに変換することにあります。
今年のプラン設計を後継者と一緒に作れば、来年は後継者が主導できます。顧客リストを今年整えれば、来年以降も使い続けられます。受付フローを今年文字に落とせば、スタッフが入れ替わっても機能します。
一つひとつは小さな作業に見えます。でもこれを毎年のシーズン商戦の度に積み重ねると、3年後には「社長がいなくても回る店」の土台が出来上がっています。それが後継者にとって「継ぎたい事業」になる条件でもあります。
今月中に動けることは何か、ぜひ一度自分のお店に当てはめて考えてみてください。
また、飲食店の集客コンサルに依頼する前に確認しておきたいこともまとめていますので、外部のサポートを検討されている方は合わせて参考にしてみてください。
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