先日、ある飲食店のオーナーからこんな相談をいただきました。
「経営計画を作れって言われるんですが、正直、数字を並べるのが苦手で……。でも、このままなんとなく経営してていいのかとも思って」
すごくよくわかります。料理一筋でやってきた人が、急に「経営計画を作れ」と言われても、どこから手をつけていいかわからないですよね。
実はこれ、僕自身も通ってきた道なんです。市役所に勤めながら中小企業診断士の勉強をしていた頃、「経営計画を作る」という作業が最初は本当に苦痛でした。でも今は、これがお店の羅針盤だと心から思っています。
この記事では、数字が苦手な飲食店経営者でも「あ、これならできる」と感じてもらえるように、経営計画の考え方と実践的な作り方をお伝えします。難しいビジネス用語は一切使いません。
📋 この記事でわかること
- 飲食店の経営計画がなぜ必要か、その本当の意味
- 数字が苦手でも使える「逆算」の考え方
- 経営計画テンプレートの具体的な作り方と記入の手順
- 計画を絵に描いた餅で終わらせないための継続のコツ
こんな方におすすめ
- ✅ 経営計画を作ったことがなく、何から始めればいいかわからない方
- ✅ 数字や財務が苦手で、計画書を見るだけで頭が痛くなる方
- ✅ 売上は立っているのにお金が残らず、その理由がわからない方
- ✅ 「なんとなく経営」を卒業して、先の見える経営をしたい方
- ✅ 補助金申請や金融機関への説明のために経営計画書が必要な方

目次
経営計画書は「未来の設計図」ではなく「今の自分への手紙」
よく「経営計画書=銀行や行政に提出するための書類」と思われています。でも本当はそうじゃない。
僕が思う経営計画書の本質は、「3年後・5年後の自分が、今の自分に書く手紙」です。「あのとき、こう決断しておいてよかった」と未来の自分が思えるような決断を、今しておくための道具。それが経営計画書の正体です。
話は変わりますが、僕は休日に清水港周辺をぶらっと歩くのが好きでして。三保の松原まで足を伸ばすこともあります。地元・静岡市清水区の風景を眺めながら、「この景色を100年後の人も見ているのかな」なんて考えるんです。
お店もそうで、「10年後もこのお店が地域にあるかどうか」は、今日何をするかで決まります。経営計画書はその「今日何をするか」を決めるための地図なんです。
❌ よくある誤解:経営計画書=難しい数字の羅列
- 損益分岐点・CF計算書・KPI……専門用語が並んでいてそれだけで挫折する
- コンサルに作ってもらったものの、自分で読み返すことがない
- 「書いた、終わり」になって、日々の経営に全く活かされていない
✅ 正しい向き合い方:シンプルな「逆算」から始める
- 「いつまでに、いくら残したいか」から逆算して、今月の利益目標を決める
- 専門用語なしで、誰でも読み返せる言葉で書く
- 毎月10分でチェックできる「実行管理シート」とセットで使う
数字が苦手でも迷わない「逆算」の考え方
経営計画で多くの方がつまずくのは、「売上目標を先に決めようとする」からです。
「今月500万円売る!」と決めても、それをどうやって達成するかが見えないから、計画は机の引き出しに眠るだけ。
僕がおすすめするのは、まったく逆の順番です。
チェックポイント1:「あなたは何のためにこのお店をやっているか」
突然哲学的な話になった、と思わないでください。これが経営計画の出発点として、実は最重要です。「老後に月30万円の生活費が必要」「10年後に2号店を出したい」「子どもが大学に入るまでに教育費を貯めたい」――こうした個人のゴールを先に決めると、逆算の計算が一気にリアルになります。
✅ ポイント:まず「65歳で引退したとして、そこまでに手元にいくら残す必要があるか」を計算してみてください。年間必要額×残り年数=必要な累計利益。これを月割りにすれば「今月いくら利益を残すべきか」という目標が生まれます。
チェックポイント2:「今のお店の粗利率を知っているか」
売上から食材費を引いた金額が粗利です。売上500万円で食材費150万円なら、粗利は350万円・粗利率70%。この数字を知らずに売上目標だけ追いかけても、手元に残るお金は増えません。
✅ ポイント:粗利率が低いお店は、値引きクーポンを使いすぎているか、客単価の低いメニューに注文が集中しているケースがほとんどです。まず現状の粗利率を計算し、目標粗利率との差を確認しましょう。
チェックポイント3:「固定費の合計を即答できるか」
家賃・人件費・光熱費・広告費・リース料……これらを足した金額が毎月必ず出ていく固定費です。「だいたい200万円くらい」ではなく、円単位で把握しているかどうかが経営計画の精度を左右します。
✅ ポイント:固定費の中に「やめられるもの」が必ず潜んでいます。「なんとなく継続しているサービス」「使っていない機器のリース」を洗い出すだけで、毎月数万円の固定費削減になるケースが珍しくありません。
✓ ここまでのポイント
- 経営計画は「売上目標を先に決める」のではなく「必要な利益から逆算する」のが正しい順番
- 粗利率・固定費を把握することが、経営計画の土台になる
- 個人のライフプランと経営計画をつなげると、目標がリアルに動き出す
「経営計画書を作るとき、最初に聞くのは売上目標じゃないんです。『あなたは何年後にいくら持っていたいですか?』という質問から始めます。そこから逆算すると、不思議なほどやるべきことがシンプルに見えてくる。数字が苦手な方ほど、逆算から始めると腹落ちが早いんです。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士/繁盛店研究所 代表取締役)
数字が苦手でも作れる経営計画テンプレートの5ステップ
経営計画作成 STEP 1
「今月の利益目標」を決める(10分)
先ほどの逆算で出た「月に必要な利益」を起点に、まず今月の利益目標を設定します。「今月は利益30万円残す」という一行が、最初の経営計画です。難しく考えすぎず、これだけでOK。
⚠️ よくある失敗:売上目標だけ書いて満足してしまい、利益への意識がゼロのまま終わるケース。売上は結果であり、コントロールできません。コントロールできるのは「価格設定」「注文点数の設計」「固定費の削減」です。
経営計画作成 STEP 2
売上を「客数×客単価」ではなく7段階に分解する
「客数×客単価=売上」という計算式はシンプルですが、現場の改善には使いにくい。僕がおすすめするのは、お客さんの行動を7段階(知る→興味を持つ→来店する→入店する→注文する→会計する→再来店する)に分解する方法です。
自分のお店がどの段階で「お客さんを取りこぼしているか」を特定すると、打ち手が明確になります。たとえば「通りを歩いている人が入ってきてくれない」なら「入店」の段階の改善。「一度来てくれるけどリピートしない」なら「再来店」の段階の改善です。
⚠️ よくある失敗:原因を特定しないまま「とにかく新規集客を増やそう」とホットペッパーに追加掲載してしまうパターン。入店率が低いお店がいくら新規客を増やしても、バケツに穴が空いたままお水を注ぐようなもの。
経営計画作成 STEP 3
「名物メニュー1品」の単価と粗利率を設計する
経営計画の中心に「利益をしっかり残せる看板メニュー」を置きます。客単価3,500〜15,000円の飲食店なら、客単価全体の30〜40%を占める高粗利メニューが1品あるだけで、月の利益が大きく変わります。
⚠️ よくある失敗:原価率が高い「こだわりの一品」を一番目立つ場所に置いてしまうケース。こだわりは大切ですが、お店として継続するためには「おいしい×儲かる」の両立を設計する必要があります。
経営計画作成 STEP 4
「やること」より先に「やめること」を決める
経営計画というと「何を追加するか」を書くものだと思われがちですが、同じくらい大切なのが「何をやめるか」の宣言です。広告費・人件費・商品種別・サービス内容……削減できるものを一行書いておくだけで、翌月のキャッシュが変わります。
⚠️ よくある失敗:「とりあえず全部続けながら新しいことをやる」という追加思考。体力も時間も資金も有限です。やめることを先に決めると、空いたリソースで本当にやるべきことができます。
経営計画作成 STEP 5
月1回・10分のチェックタイムを設ける
作った計画を毎月末に10分だけ見返す習慣をつけます。「今月の利益は目標に届いたか」「7段階のどこが改善できたか」を2〜3行メモするだけでいい。これを12回繰り返すと、1年後には驚くほど経営が見えるようになります。
⚠️ よくある失敗:「経営計画を作って満足」で終わり、1ヶ月後には存在を忘れてしまうケース。計画書は作ることが目的ではなく、使い続けることに価値があります。
「月商300万円→月商2億5,000万円になったメンバーも、最初は『数字が苦手』と言っていました。でも、毎月の利益目標を決めて、7段階を一つずつ改善し続けた結果です。大きな飛躍は、地味な積み重ねの先にある。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士/繁盛店研究所 代表取締役)
実際の成果事例:計画を持った経営者だけが変わる
「経営計画を作る前は、毎月売上が気になって不安でした。でも、利益ベースで逆算してから『今月何をすればいいか』がクリアになって、動きが変わりました。和歌山で飲食店をやっていますが、月商130万円から450万円になりました。メニューを増やすより、利益の出るメニューを1品作ることの大切さを実感しています。」
和歌山県・飲食店経営者(増益繁盛クラブメンバー)
「SNSが得意なわけじゃないんですが、奈良のうどん店をやっていて、麺の幅を少し変えたら口コミが広がって注文が1.5倍になりました。経営計画の中で『差別化ポイントを1つ作る』というゴールを設定していたからこそ、その小さな変化に気づいて実行できたと思います。」
奈良県・うどん店経営者(増益繁盛クラブメンバー)
共通しているのは、「大きな設備投資もなく」「特別なスキルもなく」、経営計画という地図を持って動いたから結果が出たという点です。計画がなければ、同じ行動をしても「なんとなく良くなった気がする」で終わります。計画があるから「どこが改善されたのか」が見える。見えるから、次の打ち手が生まれる。
まとめ:「なんとなく経営」を今日で卒業しよう
経営計画書は、MBAを持つ人や数字の得意な人だけのものじゃありません。「自分のお店を10年後もここに残したい」「家族に安心してほしい」「スタッフに胸を張って給料を払いたい」――そういうシンプルな想いを持つ経営者なら、誰でも作れるし、作るべきものです。
難しい言葉は要りません。必要なのは、「いつまでにいくら残したいか」という1行から始める勇気だけ。
静岡市清水区で創業20年、北海道から沖縄、アメリカ在住の日本人経営者まで全国の飲食店・美容室・小売店を指導してきた経験から言えるのは、「経営計画を持った経営者は、どんな環境変化にも動じない」ということです。
まずは「お客さんの購買行動7段階」を使った売上の分解方法から学んでみませんか。販促改善の考え方を体系的にまとめた教材を、ぜひ覗いてみてください。
👇 お客さんの行動を軸に、経営計画の「何をどう改善すればいいか」が体系的にわかります。
また、毎月の経営改善を仲間と一緒に続けていきたい方は、会員制コンサルティングへのご参加もお待ちしております。飲食店・美容室・小売店の経営者が全国から集まり、実践事例を共有しながら学ぶ場です。一人で悩む必要はありません。
👇 会員制コンサルティング「増益繁盛クラブ」の詳細はこちらからどうぞ。