「トリートメントもいかがですか?」と声をかけるたびに、なんとなく気まずい空気が流れる。
断られるのが怖くて、最初から提案するのをやめてしまった。
メニューを増やしたいけど、今より高いものをすすめたら「押し売り」に思われそうで踏み出せない。
価格は変えていないのに、なぜか手元に残るお金が年々減っている気がする——。
美容室を経営している方から、こういった声をよく聞きます。技術は確かなのに、客単価という数字が一向に上がらない。その理由、実は「提案の仕方」の問題ではなく、「何を・どう伝えるか」の言葉の設計の問題であることがほとんどです。
私はハワードジョイマン。静岡市清水区を拠点に、飲食店・美容室・小売店の経営者向けに、値引きに頼らず利益を伸ばす仕組みづくりをサポートしてきて20年以上になります。中小企業診断士として、そしてお笑い芸人時代に培った「人の心を動かす言葉の力」を経営に応用した独自メソッド「笑人の繁盛術」を通じて、全国の店舗経営者の業績アップを支援しています。
この記事では、美容室オーナーが「客単価を上げたい」と思ったときに実際に何が起きているのか、どうすれば既存客に喜ばれながら自然に単価が上がるのかを、具体的なケースを交えてお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 客単価が上がらない本当の原因(提案の問題ではない)
- 「押し売り感ゼロ」で追加メニューを選んでもらう言葉の作り方
- 松竹梅の構成で客単価を自然に引き上げる仕組み
- 既存客から「ありがとう」と言われる提案が生まれる考え方
こんな方におすすめ
- ✅ 客単価を上げたいが、どう提案すれば押し売りにならないか悩んでいる美容室オーナー
- ✅ トリートメント・カラーの追加提案がうまくいかないと感じている方
- ✅ 値引きクーポン以外の集客・単価アップ方法を探している方
- ✅ 既存客のリピート率を高めながら収益も改善したい方
- ✅ 料金を上げたいが、客離れが怖くて踏み出せない美容室経営者

目次
「カット4,500円」という表示が、客単価の天井を作っている
あるケースをお話しします。神奈川県で10年以上営業している美容室のオーナーさんが、こんな悩みを持っていました。「技術には自信がある。でもメニュー表を見たお客さんはほぼ全員、一番安いカットだけで帰る。トリートメントはほとんど売れない」と。
このオーナーさんのメニュー表を見せてもらったとき、すぐにわかりました。メニューの並び順が「カット4,500円→カット+カラー9,000円→カット+トリートメント6,500円」という価格の安い順になっていたんです。
人間の目は、一覧を上から順に見て「一番上=標準」と判断する習性があります。一番上に安いメニューを置けば、それが「普通の選択肢」になってしまう。お客さんは悪いわけでも、ケチなわけでもない。ただ、メニューの設計がそう誘導していただけです。
しかも「カット」という言葉は、あくまで「作業の名前」です。お客さんが知りたいのは「このメニューを頼んだら、自分はどう良くなるのか」——つまり、自分への「ご利益」です。「カット」という言葉からは、何のご利益も伝わってきません。
「メニュー名が作業名のままである限り、お客さんは値段でしか判断できない。値段で比べられる土俵に、自分から乗ってしまっているんです」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 代表)
「ご利益の言葉」に変えると、なぜ追加注文が増えるのか
先ほどの神奈川の美容室のオーナーさんに取り組んでもらったのは、まずメニュー名の書き換えでした。
❌ 従来のメニュー表示
- 「カット 4,500円」→作業名のみ。何が得られるか伝わらない
- 「トリートメント 2,000円」→「やらなくてもいい追加オプション」に見える
✅ 「ご利益の言葉」に変えた表示
- 「朝のスタイリングが3分で決まる扱いやすさカット 4,500円」→翌朝の自分への恩恵が見える
- 「1ヶ月後もツヤが続く潤いトリートメント 2,000円」→時間軸で得られる価値が伝わる
言葉を変えただけです。技術も価格も変えていない。でも「このトリートメント、どんなものですか?」と聞いてくるお客さんが増え、会話が自然に生まれるようになりました。お客さんの側から質問してくるということは、もう「押し売り」ではない。お客さん自身が興味を持って選んでいる状態です。
奈良県のうどん店で、麺の幅を少し広くしただけでSNSのバズが起きた事例があります。商品そのものを大きく変えたわけじゃなく、「既存要素の見せ方を変えた」だけで反応が変わった。美容室のメニュー名も、全く同じ原理が働いています。
「松竹梅」の構成が、客単価を自然に引き上げる
言葉を変えることに加えて、もう一つ取り組んでほしいのが「松竹梅の構成」です。
人間は選択肢が1つしかないと「やる・やらない」の二択になります。でも3つの選択肢があると、「どれにするか」という比較になる。そして多くの人は、一番安いものを選ぶことへの心理的抵抗と、一番高いものへの「勿体ない」という感覚の両方から逃れて、真ん中を選びやすいという習性があります。
具体的にはこんな構成です。
- 【梅】カット+シャンプー・ブロー 5,500円
- 【竹】カット+カラー+シャンプー・ブロー 13,000円 ← ここを売りたいメニューに設定
- 【松】カット+カラー+トリートメント+シャンプー・ブロー 17,000円
ポイントは「松」の価格を設定することで、「竹」が「お得な選択肢」に見える心理効果を作ることです。これは決して「だます」のではありません。お客さんに「比べる基準」を提供しているのです。
✓ ここまでのポイント
- メニュー名を「作業名」から「ご利益の言葉」に変えるだけで、お客さん側から質問が生まれるようになる
- 松竹梅の構成で「どれにするか」という選び方に変わり、客単価が自然に上がる
- 価格も技術も変えずに、「言葉の設計」を変えるだけで反応は変わる
「ありがとう」と言われる提案が生まれる、本当の理由
「押し売りに思われたくない」という気持ち、よくわかります。でも少し立ち止まって考えてほしいのですが——お客さんにとって本当に必要なものを、ちゃんと伝えずに黙って帰すことが、果たして「親切」と言えるでしょうか?
たとえばこんなケースです。毎月カットだけで来店していたお客さんが、3ヶ月ぶりに来店。髪のダメージが明らかに進んでいる。でもスタッフは「押し売りに思われたくないから」と何も言わずに施術を終える。そのお客さんは半年後、別の美容室で「ここはちゃんと髪の状態を説明してくれて、トリートメントを勧めてくれた」と感激して、そちらに乗り換えてしまう。
提案しないことがリピートを逃す原因になっているケースは、実は非常に多いんです。
お客さんの立場で考えると、「自分の髪の状態を見てちゃんとアドバイスしてくれる美容師さん」を求めています。だから提案は、売り込みではなく「専門家としての診断と提案」として伝わったとき、初めて「ありがとう」という言葉が返ってくる。
そのためには、「このトリートメントをやると儲かるから勧める」ではなく、「このお客さんの今の髪の状態に、このメニューが本当に必要だから伝える」という姿勢が伝わる言葉で話すことが大切です。技術の話ではなく、お客さんの未来の姿(1ヶ月後の髪の状態)をリアルに描いてあげること——これが「ありがとう」を生む提案の核心です。
「和歌山県のある飲食店では、地域にない独自のプレートメニューを作って客単価と客数を同時に伸ばしました。月商が130万円から450万円になった。これは価格を下げたからじゃない。お客さんが『これは自分にとって価値がある』と感じるものを、ちゃんと見せてあげたから選ばれたんです。美容室も全く同じことが言えます」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所 代表)
「カルテ×接触頻度」で、次の来店を自分から決めてもらう仕組み
客単価アップと同じくらい重要なのが、リピート率を上げることです。客単価が上がっても、来店頻度が下がれば収益は変わりません。
ここで有効なのが「次回予約の仕組み化」です。施術が終わったとき、「また来てくださいね」で終わるのではなく、「今の状態をキープするには、6週間後が理想的なタイミングです。ご予定はいかがですか?」と伝えて、その場で次回予約を取ってもらう。これだけで、来店頻度が変わります。
さらに、LINE公式アカウントを使った配信との組み合わせが強力です。
チェックポイント①:次回来店の「理由」を伝えているか
「そろそろカラーが気になる時期ですよ」という一言が、来店動機になります。「来てください」ではなく「こういう理由で、今が来どきですよ」と伝えられているかを確認しましょう。
✅ ポイント:施術後のカルテに「次回案内の日付」と「伝えるべきポイント」を書き留めておくと、LINEやハガキでの案内が自然な言葉になります。
チェックポイント②:名物メニューが1つあるか
「この美容室といえば〇〇」と言えるメニューはありますか?鳥取県のラーメン店では、Googleの口コミをAIで分析してお客さんが評価するポイントを言語化し、それをメニューのキャッチコピーに反映させました。美容室でも同じ発想で「うちの一番の強み」を言葉にして、メニュー表やInstagramで発信することが「脳内No.1」を作る土台になります。
✅ ポイント:お客さんが書いてくれた口コミを読み返し、「自分が思っていなかった言葉で褒められている部分」を探してみてください。そこに名物メニューのヒントが隠れています。
「月商300万円だった飲食店が、仕組みと言葉の設計を変えて月商2億5,000万円を達成した事例があります。もちろんすぐ同じ規模にはなりません。ただ、根っこにある原理は美容室でも同じ。値引きせずに価値で選ばれる店になることが、長く繁盛し続ける唯一の道だと私は確信しています」
増益繁盛クラブメンバー(飲食店経営者・実績より)
まとめ:客単価アップは「提案の勇気」より「言葉の設計」から始まる
美容室の客単価アップを難しくしている一番の原因は、「提案する勇気がない」ことではありません。「お客さんにとってのご利益が伝わる言葉になっていない」こと、そして「選ばせる仕組みが設計されていない」ことです。
今日から取り組めることをまとめます。
- メニュー名を「作業名」から「ご利益の言葉」に書き換える
- メニューを松竹梅の3段階で構成し、売りたいものを「竹」に置く
- 施術後に「次回はこの時期がベストです」と伝えて、その場で予約を取る
- 自分の一番の強みを口コミから言語化して、「名物メニュー」を育てる
設備投資は不要です。価格を下げる必要もありません。言葉と設計を変えるだけで、既存客から「ありがとう」という反応が返ってくるようになります。
もっと深く学びたい方のために、顧客の購買行動を7段階に分解して販促を設計する教科書を用意しています。「なぜお客さんが追加注文しないのか」「どの段階に手を打てば単価が上がるのか」を体系的に理解できる内容です。ぜひ一度手に取ってみてください。
また、全国の飲食店・美容室・小売店の経営者が集まる会員制コンサルティング「増益繁盛クラブ」では、毎月の会報誌・セミナー・個別サポートを通じて、こうした仕組みづくりを一緒に進めています。「まず話だけでも聞きたい」という方は、無料メルマガ「繁盛店になるための12のステップ」からお気軽にどうぞ。実践者が全国にいますので、同じ悩みを持つ経営者の事例が必ず参考になると思います。