朝8時に店に入って、仕込みをして、ランチを回して、午後に発注して、夕方の準備をして、夜の営業が終わったら翌日の段取りを考えながら帰宅。気づけば夜11時。「経営のことを考えよう」と思っていたのに、また今日も何もできなかった――。
そんな一日が、週5日、月20日続いていませんか?
「もっと売上を伸ばしたい」「集客の仕組みを作りたい」「スタッフに任せられる環境にしたい」。頭ではわかっているのに、体は現場に縛られたまま。これは意志の力でどうにかなる問題ではなく、時間の使い方の設計が間違っているという構造的な問題です。
この記事では、静岡市清水区で20年以上にわたり全国の飲食店・美容室経営者を支援してきた中小企業診断士・ハワードジョイマンが、「経営者に時間がない」問題の本当の原因と、今日からできる改善の第一歩をお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 「時間がない」の正体――なぜ経営者は現場から抜け出せないのか
- 24時間の棚下ろし術の具体的なやり方
- 「やめること」を先に決める逆算思考の重要性
- 社長が本来集中すべき仕事とは何か
こんな方におすすめ
- ✅ 毎日現場に入り続けていて、経営戦略を考える時間が取れない方
- ✅ 「自分がいないと店が回らない」状態から抜け出したい方
- ✅ やることが多すぎて、何から手をつけていいかわからない方
- ✅ スタッフに任せたいけれど、任せ方がわからない方
- ✅ 時間を作って、売上アップのための仕組みづくりに取り組みたい方

目次
「時間がない」は意志の問題ではない
よく「時間がないのは、優先順位が付けられていないから」と言われます。でも正直、そういう話を聞いても「それができたら苦労しないよ」と思いませんか。
経営者に時間がない本当の理由は、社長がやらなくてもいい仕事を、誰かが「やっていない」から社長がやるしかない状態になっているからです。
仕込み、洗い物、発注、クレーム対応、SNS投稿、シフト調整……。これらの仕事は確かに必要です。でも、それを「社長がやる必要があるか」と問われたら、答えはほとんどの場合「No」です。
「自分でやったほうが早い」「自分のほうが上手くできる」という感覚は間違っていません。でも、その判断を続けた結果、スタッフは育たず、社長は現場から離れられず、経営の仕事は後回しになる。この構造を変えない限り、どれだけ頑張っても状況は変わりません。
「24時間を書き出してみると、ほとんどの経営者が驚きます。社長じゃなくてもできる仕事に、1日の8割以上の時間を使っていることがわかるからです。でもそれは才能の問題でも、努力が足りない問題でもない。設計の問題です。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所代表)
「24時間の棚下ろし術」のやり方
「棚下ろし」とは、棚に置いてある物を全部出して中身を確認する作業のことです。時間の棚下ろしとは、自分の1週間の時間の使い方を全部書き出して、「何にどれだけ時間を使っているか」を可視化することです。
やり方は非常にシンプルです。
チェックポイント①:1週間分の行動を15分単位で書き出す
月曜から日曜まで、朝起きた時間から夜寝る時間まで、15分刻みで「何をしていたか」を書き出します。記憶を頼りに書いてもいいですし、1週間実際に記録してみても構いません。スマホのメモ帳でも、手書きのノートでも、何でもOKです。
✅ ポイント:「仕込み」「仕入れ先との電話」「Instagram投稿」「シフト確認」のように、できるだけ具体的に書くことが大切です。「作業」とまとめてしまうと、後の分析ができなくなります。
チェックポイント②:3つに分類する
書き出した行動を、以下の3つに仕分けします。
(A)自分にしかできない仕事
(B)他のスタッフに任せられる仕事
(C)なくしてもいい仕事・AIや仕組みで自動化できる仕事
✅ ポイント:「これは自分しかできない」と思っていても、冷静に見ると「慣れれば誰でもできる」ことが多いです。「自分しかできない」と「自分がやり続けてきた」は、全く別のことです。
チェックポイント③:(A)の仕事の合計時間を計算する
本当に社長にしかできない仕事(新メニューの開発・販促戦略の立案・重要な顧客との関係構築・スタッフの育成方針の決定など)が、1週間のうち何時間あるかを確認します。
✅ ポイント:(A)が10時間以下だった場合、残りの時間は構造的に解放できる可能性があります。まずこの事実を「見る」ことが第一歩です。
✓ ここまでのポイント
- 「時間がない」の原因は意志の弱さではなく、社長がやらなくてもいい仕事を抱えすぎている設計の問題
- 1週間の行動を15分単位で書き出し、3分類することで「解放できる時間」が見える
- 「自分しかできない仕事」と「自分がずっとやってきた仕事」は別物と認識することが重要
「やめること」を先に決める
多くの経営者は「何を始めるか」から考えます。でも時間が足りない状態で新しいことを始めようとすると、必ずどこかで息切れします。
正しい順番は逆です。「何をやめるか」を先に決める。
先ほど3分類した(B)と(C)の仕事を、今週中に1つでも手放すことから始めてください。完璧なマニュアルを作ってから引き継ごうとしなくていい。まず「この仕事、明日から〇〇さんにお願いする」と決めることが先です。
❌ よくあるパターン:「完璧に仕組み化してから任せる」
- マニュアル作りに時間がかかりすぎて、結局自分でやり続けてしまう
- 「まだ任せられない」という状態が永遠に続く
- スタッフが育つ機会が生まれない
✅ 推奨アプローチ:「まず任せて、一緒に改善する」
- 口頭で説明し、最初の数回は横で見ながら一緒にやる
- 失敗しても修正できる範囲の仕事から任せ始める
- 任せることで、スタッフが経験を積み成長する機会が生まれる
「やめることを先に決める、という発想はシンプルですが、実行できている経営者は少ない。なぜかというと、『やめた後に何が起きるか』が怖いからです。でも実際に手放してみると、たいていの場合、お店は思ったより問題なく回ります。その経験を積み重ねることで、だんだん任せられる範囲が広がっていく。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所代表)
社長が本来やるべき「2つの仕事」とは
時間を作ったら、何に使えばいいのか。答えはシンプルです。社長の仕事は本来、たった2つです。
① 売上を作る仕事
新しい名物メニューを考える、販促の仕組みを設計する、重要なお客様との関係を深める、地域での認知度を上げる施策を考える――こうした「お金が入ってくる仕組みを作る仕事」です。
② 儲かる仕組みを作る仕事
利益率の高いメニュー構成を設計する、スタッフが育つ環境を整える、店内売上以外の収益源を作る、業務を自動化・効率化する――こうした「お店がより良く回る仕組みを作る仕事」です。
これ以外のことは、基本的に社長がやる必要はありません。
たとえば、千葉県のお好み焼き店の事例があります。店内売上だけに頼っていた状態から、製薬会社向けの弁当(単価2,500〜3,000円)を朝50個受注するルートを新たに構築しました。これは「儲かる仕組みを作る」仕事に時間を使った結果として生まれた新しい収益源です。社長が現場だけに集中していたら、この発想は生まれなかったはずです。
「月商130万円から450万円に伸びた和歌山の飲食店オーナーさんも、最初は『自分が全部やらないと不安』という方でした。でもメニュー開発と集客の仕組みづくりに時間を集中できるようになってから、結果が一気に動き始めた。時間を作ることは、手段ではなく出発点です。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・繁盛店研究所代表)
まとめ:今日から始める「時間の解放」
「時間がない」という問題は、多くの場合、努力や根性では解決しません。解決するのは、時間の使い方を設計し直すという一つの判断です。
まず今週、自分の1週間の行動を書き出してみてください。15分単位で書き出し、3分類する。それだけで「自分がどこに時間を使っているか」が見えてきます。そして(B)(C)の仕事を1つ手放すことを決める。この小さな一歩が、経営者としての仕事に集中できる時間を生み出す第一歩になります。
私は静岡市清水区を拠点に、20年以上にわたって全国の飲食店・美容室・小売店経営者の業績改善を支援してきました。北海道から沖縄、アメリカ在住の日本人経営者まで、「時間がない」「現場から抜けられない」という状態を変えてきた方が数多くいます。大切なのは特別な才能ではなく、設計の順番を変えることです。
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